LGB 2074D Spreewald

小さいLGBの蒸気機関車2074Dです。
車輪配置はモーガルと同じ2-6-0ですが、テンダーはなく、ボイラーの両脇に水を入れ、後ろに石炭を積む短距離用タンク型機関車です。

Spreewald(シュプレーヴァルト)と名付けられています。シュプレーの森という意味で、ポーランドからベルリンに流れているシュプレー川の周りに広がる緑の一帯です。実物の機関車は100年前(1917年)に製造されて、そのあたりを走っていました。Pillkaller Kleinbahnという軌間1,000mmの軽便鉄道で、その23号(PKB 23)という機関車でした。

その鉄道は第二次大戦で壊滅的な被害を受けて、機関車は東ドイツの国鉄登録でDR99というカテゴリーの番号を転々(5621、5631、5633)とした後、1971年にDEV (Deutscher Eisenbahn-Verein: German Railway Society)という保存鉄道の協会が購入して、DEV保存鉄道の4番目の機関車となりました。その時に付けられた名前がSpreewaldです。このLGBのモデルとなった機関車は、現在もブレーメンの近くにあるDEVで走っています。

YouTubeに実物のSpreewaldがたっぷり写っている動画がアップされています。

1990年代にオランダに滞在していて、ドイツの鉄道路線を回っていた頃、DEVを知りました。この模型機関車を購入したのは2000年頃だったと思います。1980年製で、もちろん新品ではありませんが、程度はいいものでした。

LGBのSpreewald機関車2074あるいは2074Dは1975年に発売されたようで、その後、LGBのディジタル回路MTS(Multi Train System)が組み込まれて、22741という型番に変わりましたが、廃版となりました。でも、今年2017年12月には、メルクリンのLGBブランドで、mfx(DCC)デコーダー・サウンド搭載のSpreewald 100周年モデルが限定発売(型番24742)される予定だそうです。

購入してさっそく、DCC化とサウンド・ボードを搭載するために分解しました。搭載するのは、DCCボードがLokPilot XL、サウンド・ボードがPhoenix 2K2です。

LGBらしく、鉛のウェイトがいっぱい詰まっています。車体が小さく、テンダーもないので、この中にすべてを組み込まなくてはなりません。

先ずはスピーカーですが、取り付け位置はボイラーの先端部あたりしかありません。このサイズのスピーカーでGゲージの大きなサウンドを出すのはむずかしいのですが、ぴったりのものが見つかりました。ボイラーに合わせて、上のほうを丸く切り取りました。

ウェイトを一部切り取って、スピーカーを後ろ向きに取り付けます。スピーカーの下側に通気用の穴を開けておきました。このあたり、これから発売される24742でどのように処理されているか興味があります。穴を開けたあたりに下向けというのが常識的でしょうか。

試運転をした結果、少し音がこもるような気がしたので、ウェイトをすっきりした形に切り取りました。総重量はスピーカーが入ったので、大きな違いはなく、牽引力は問題はありません。

Loksound XLとPhoenix 2K2は重ねてボイラーに入れました。

動輪に同期用のマグネットとリードスイッチを取り付けました。第1動輪の内側に小さなマグネットを接着しています。

次の写真は底に貼ったリードスイッチです。この2つのスイッチで線路内(枕木)に取り付けたマグネットによって汽笛と鐘が鳴るようにしました。大阪で作ったレイアウトでは線路のマグネットを使わなくなったのですが、そのままです。

なお、この写真に模型の製造日(801128)のスタンプが入っています。1980年のクリスマス向けのような日付です。

ついでに、3つのヘッドライトをLEDに交換しました。3mmのLEDが電球とほぼ同じサイズです。

ボイラー部を浮かせたまま、点灯状態の確認です。組み上げたら、改造完了です。

DEVの列車らしく、DEV仕様の客車を2両連結しました。LGBの3020です。照明を組み込んであります。

1両目の客車の開いている窓には、フランツ・カフカの肖像からフィギュアを作ってみました。カフカの向かいに座っているのは、当時の愛犬ショパンのフィギュアですが、大きすぎてE.T.みたいになりました。

2両目です。

最後尾のコンバイン(荷物・車掌車)もDEV(LGB 4039)で揃えました。

ヤードではLGBモーガルの隣で待機しています。

以下の走行ビデオでは音が出ます。Phoenix 2K2のサウンドは実物とは少し違いますが、悪くありません。
ヤードから出発します。

トンネルから出てきます。

駅に停車しました。

楽しい機関車です。

 

模型の線路

鉄道の線路は、レールと枕木だけではなく、枕木を支える道床(主に砕石)と、その下の路盤までが含まれます。模型も同じで、路盤をレイアウトに作って、その上に道床と枕木とレールを載せることになります。でも、ふつうに線路と呼ぶ場合は、レール+枕木(+道床)だけを指すことが多いようです。

鉄道であるからには模型でも金属製のレールは不可欠です。現代の実物のレール形状は軌間(ゲージ)とはあまり関係なく、世界的に高炭素鋼で作られた、次のような断面の「平底レール」が使われています。

平底レール断面

レールは通過車両による負荷に合わせて大きさ(主に高さ)が違い、1mあたりの重さで区別されています。たとえば、JRの新幹線、一部の在来線・一部の私鉄は60kgですが、多くは50kg以下のようです。本州の初期の鉄道はイギリス製の60ポンド(約30kg)、北海道の開拓鉄道ではアメリカ製の30ポンド(約15kg)、いずれも「錬鉄」製のレールが使われたそうです。

レール集電の電動模型のレールは、加工が容易で導電性の高い洋白(洋銀:ニッケルシルバー)、真鍮(黄銅:ブラス)、アルミなどで作られています。中には鉄もあります。レールは金属製ですが、枕木や道床はほとんどプラスチック製です。

HOゲージ以下の模型線路は、道床と枕木にレールが固定された道床付き線路と、道床無しで枕木だけがレールを固定している線路、レールだけ(日本のショップではほとんど見かけませんが)、という分類で販売されています。1・Gゲージになると、枕木付きレール、レールだけ、枕木だけの市販製品はありますが、道床付きは見たことがありません。

なお、ここではゲージを軌間とし、模型の縮尺はスケールと表現しています。

Nゲージ
軌間は9 mm(0.354インチ)で、世界的に統一されています。下の写真は手持ちのNゲージの線路で、すべて日本製です。左2つは30年以上前のもので、左端がエーダイ・ナイン(1980年に廃業)、2 つめがTomix(今は形状が変わっている)です。これらは処分せずに残しているだけで、使っていません。右2つは当模型鉄道で使っているKATOの製品です。右端は道床無しで、自由に曲げられるフレキシブル線路で、コルクの道床を敷いて曲線部分に使っています。KATOの線路は海外でも販売されていますが、枕木の色が黒というのは気になるところです。

N tracks

上の写真の右から2番目、KATOの道床付き線路の連結部分です。レール形状は、首の細いところはありますが、頭がやけに縦長で、平底レールの雰囲気はありません。

N kato

実物の60kgレールはJIS規格で高さは174mmです。アメリカ、ヨーロッパも同じような規格です。KATOのレールの高さを測ると2mmほどあります。この高さは後述するHOのコード83と同じです。Nゲージの縮尺は1/148~1/160ですから、150倍で高さ30センチの巨大レールということになりますので、気にする人は気にする話題です。

日本のシノハラはNゲージ(フレキシブル)ではコード60と70を出しており、米国のアトラス(ATLAS)にはコード55、65、80の3種類が区分されていますが、いずれも使ったことはありません。また、レールの下部を枕木部分に埋めて、見える高さを低くした線路も海外では市販されているようです。

HOゲージ
HO(1/87)も日本の16番(1/80)も軌間は同じ(16.5 mm=0.650インチ)です。手持ちのHOゲージの線路は6種類あり、当模型鉄道ではすべてを使っています。まあ、統一感がありませんが、購入の歴史があって、使わないのはもったいないし、色を塗れば違いは目立たないと思うようにしています。

並べてみます。左端がバックマン(Bachmann:香港・米国)の道床付き線路、左から2つめはアトラス (ATLAS:米国)の橋キットに付属の道床無し線路、3つめはメルクリン(Märklin:ドイツ)のKトラックという道床無しの線路、4つめはメルクリンの道床付きCトラック、5つめ(右から2つめ)はエンドウ(日本)の道床付き線路、右端はシノハラ(日本)の道床無しフレキシブル線路(コンクリート枕木仕様)です。フレキシブル線路は扇形庫周辺に使っています。

HO tracks

当模型鉄道HO(2階部分)の複線周回レイアウトの曲線部分は外側にメルクリンのCトラック(橋の直線部はKトラック)、内側にエンドウの道床付き(橋の直線部はアトラス)を使っています。

メルクリンの曲線(型番24912)の半径は1,114.6 mm、エンドウの曲線(型番1104「ポイント調整用曲線」)の半径は1,085mmなので、メルクリンを外側にすると少し調整するだけでなんとか複線にすることができます。同一半径の道床付き曲線線路を複線にするのは加工が結構むずかしいし、最初はメルクリンの車両も走らせたかったので、このような配置になりました。

これ以上の曲線半径を作るにはフレキシブル線路を使うしかありませんが、最初に作ったレイアウトが組み立て式で、その路盤を現在の固定式レイアウトにも使ったので、そのまま利用しています。一応、曲線部には道床の外側に1mm弱の厚紙を敷いて、カントを作っていますが、緩和曲線はありません。

模型のレールをよく見ると、レールそのものにもサイズ(高さ)の違いがあります。前に書いたように、実物の60kgレールの高さが174mmとすれば、HO(1/87)なら2mm、16番(1/80)なら2.175mmになります。

模型の線路はコード(code)という単位(インチのパーミル:1,000分の1を1とする単位)で高さが表現されていて、HO用では、コード70(高さ0.070インチ=1.8mm)、コード83(高さ0.083インチ=2.1mm)、コード100(高さ0.100インチ=2.54mm)あたりが市販されています。

これらはアメリカやヨーロッパの鉄道模型愛好家の任意団体によって規格が制定・推奨されて、その規格に基づいて欧米のメーカーは作っていますが、日本にはそういう団体はありません。また、レール製造が中心のシノハラやPeco(英国)以外のメーカーはあまりコードを明示していないようです。

多く使われているのはコード83と100です。HO(1/87)だとコード83、日本の16番(1/80)の幹線だとコード83か100、ローカル線だと83か70でしょうね。でも、このあたりは好みの問題です。本気でスケール感を重視すると、1/80でJRなどの狭軌(1,067mm)では軌間13mmの線路(マイナーですが、シノハラやIMONから市販されています)になるでしょうから、いろいろと大変ですね。

レールの高さで定義されているコードですが、実際には、レールの頭の幅や形状もメーカーによって異なりますし、枕木の幅と高さ、道床のデザイン・質感などを総合すると、見た目はかなり違います。スケール感重視で、繊細な具象的レイアウト・ジオラマを作る方は気にするのでしょうね。

異なった種類の線路をつなぐのは、異種レールをつなぐジョイナーをセットしたり、ヤスリでレールを少し削ってレール上面を合わせるなど、それなりの手当てをしておけば、走行にはまったく問題はありません。当模型鉄道では、道床の仕上がりや幅が違うのは塗装でごまかし、道床の底からレール面までの高さが違う場合は下に厚紙を敷いて調整しています。

そんなミックス線路状態がよくわかる写真があります。HOのヤードの配置を考えていた頃(2013年)のスナップです。

手前のヤードの切替はバックマンの分岐器(ターンアウト)で、その前後はエンドウです。その先にはメルクリンが続いています。そして、右上に写っている周回複線の外側(メルクリン)と内側(エンドウ)の間に片渡り線を設けています。外側からメルクリンの分岐器、内側からはバックマンの分岐器で連絡させています。

この時期はまだメルクリン車両の走行に執着していて、二線式と三線式をスイッチ回路で実現していました。メルクリン車両は外側のみの走行で、内側に入ることはできませんが、二線式車両は外側に渡って走行できます。もちろん、メルクリン車両と二線式車両を同時に同じ線路上に置くことはできません。

メルクリン車両をあきらめて、すべてを二線式にしたら、自由に分岐器を配置することができました。アメリカのショップでバックマンのDCC組み込み分岐器が格安だったので、すべてバックマンの分岐器になりました。

現在のヤード付近です。周回複線には渡り線を廃止(渡り線は駅構内に設置)したし、全体に塗装したので、異なったメーカーの線路の違いはわかりにくくなっていると思います。バックマンの枕木が黒なので、この程度の簡易塗装では無理ですけど。

レール形状の違いを眺めてみます。
メルクリンの連結部分です。道床付き線路Cトラックの連結部分は複雑ですが、カチッとピッタリはまります。これはメルクリンならではの気持ち良さです。お座敷レイアウトなどでの組み立て・分解がとても楽で確実です。レールの頭部分は丸い感じです。レール高は実測2.3mmでした。なお、実測には誤差があるかと思います。念のため。

HO marklin1

メルクリンの線路独自の特徴として、KトラックにもCトラックにも枕木中央部分に突起があります。メルクリンの線路は左右2本のレールが電気的につながっていて、中央の突起と両側のレールとで給電します。そのため、メルクリンの動力車は台車の底に集電装置が付いていて、線路中央の突起と接触するようになっています。

HO marklin2

当模型鉄道では、二線式に対応させるために、2本のレールがつながっている部分(道床の裏側)を切り離して、左右のレールを独立させています。

メルクリンは一時期、枕木・道床が透明プラスチックのCトラックを販売していました。ジオラマ的レイアウト用とは言えず、ディスプレイ・ケース用に使うとオシャレな感じで、色を自由に塗ることもできるし、下から照明を当てて楽しむこともできるようです。もうメルクリンのサイトでの商品検索には出てきませんが、今でも在庫品販売は多いようです。例えば、Märklin 20197(188mmの透明)だと普通のCトラック24188と同じくらい(ドイツのショップで€3前後)です。

次はエンドウの連結部分です。塗装した線路なので汚く見えますが、レールの頭はくっきりと、きれいな平底レールの形状になっています。レール高は実測2.5mmだったので、コード100ですね。

HO endoh

シノハラのフレキシブル・レールです。これもきれいな平底レールの形です。シノハラは海外でも多く使われているようで、コード83と100の2種類を出しています。コード83は実測で2.09mm、コード100は2.48mmでした。

HO shinohara

(追記:残念ながらシノハラは廃業となりました。でも、金型を引き継いだIMONがHOのフレキシブル線路を製作・販売することになりました。)

最後はバックマンです。レールの頭が三角おにぎりみたいですね。レール高は実測2.54mmでした。当模型鉄道で、バックマンの線路は分岐器すべてと、その他に少々使っているだけです。

HO bachmann

1・Gゲージ
1ゲージとGゲージはどちらも軌間が45mm(1.75インチ)なので、同じ線路で走らせることができます。スケール(縮尺)から言えば、45mmの軌間は実物1,435mm(5フィート8.5インチ)のほぼ1/32で、元来はメルクリンなどの1ゲージのサイズです。

最初に入手したのがLGB(Lehmann-Groß-Bahn:ドイツ)製のGゲージの車両と線路だったので、すべてLGB製ですが、一部、Aristo-Craft(米)製の分岐器を加えたところがあります。

LGBは真鍮製のレールです。

G LGB1

レールの断面です。

G LGB

さすがに、この縮尺だと、レールは実物に近い形状ですが、全体に太いですね。野外でも使える丈夫な線路です。LGBの縮尺はだいたい1/22.5で、レールはコード332に分類されているようです。実測した高さは8.5mmだったので、1/20くらいですね。

LGBでは直線線路の基本は長さ30cm(型番10000)ですが、長い直線を作る時に便利な60cmの倍サイズ(型番10600)もあります。1.2mの4倍サイズ(型番10610)もあるようですが、購入したことはありません。

札幌時代は長い直線区間のある折りたたみ式レイアウトだったので10600を使っていましたが、直線区間が短くなった現在はすべて30cmにしていて、60cmはしまい込んでいます。

60cmは継ぎ目の「ガタンゴトン」の音が少なくなるのが物足りないと思いましたが、25mの定尺レールの縮尺で考えれば1m以上が必要ですから、60cmでも短いわけです。ロングレールが当たり前の現代では、実際の列車がそれほどの頻度でガタンゴトンと振動すると乗ってられないでしょうね。乗っている場合と眺めている場合、そして実物と模型の関係はいろいろな側面が複雑に絡みあっていて、面白いものです。

曲線については、基本のR1(半径600mm)からR5(半径2,320mm)まであります。現在の3階建てレイアウトではR3(半径1,198mm)を使っています。Gゲージともなると、フレキシブル線路はありませんので、好みの曲線半径が欲しい場合はレール単体(1.5m)を購入して、ベンダーを使って曲げることになります。枕木は別に販売されています。

上の写真を撮るために出してきた箱には「Ridge Road Station」というなつかしいシールが貼られています。

これはニューヨーク州Holleyにあった大きな独立模型店です。日本でのLGB製品の販売価格があまりに高かったので、Gゲージを始めてからずっとLGB製品の通信販売で利用していました。店頭販売がメインの店で、サイトには買物カゴなどはなく、メールで見積もりを依頼して発注していました。担当者の対応がとても丁寧で、発送も船便・航空便を選ばせてくれました。10600の箱に貼られている当時(2004年頃)の価格シールには、1本あたり価格$9.99、セール価格$7.49となっています。残念ながら、2011年に廃業してしまいました。

縮尺1/32の1ゲージの製品を出しているメルクリンも線路を出していて、1ゲージらしく、すっきりした容姿ですが、そちらは使っていないので詳しいことはわかりません。このあたりはコード250でしょうが、ネット上のフォーラムでは、実測コードは205だと報告されていました。

メルクリンなどの1ゲージ車両を載せると、LGBの線路は少しオーバーサイズの感じですが、走行させていると気になりません。戸外の庭園鉄道として楽しむ人は、ゴミなどの対策としてコード332を使うことが多いようです。

LGB 2018D 2-6-0 Mogul

20年くらい前でしょうか、Gゲージという大きなサイズの鉄道模型を知りました。写真のみで模型の実物に触れたことはなく、試しに中古をアメリカのeBayで購入したのが、LGB(Lehman Groß Bahn:レーマンの大きな鉄道)製のモーガル(Mogul: アメリカの蒸気機関車)です。

モーガルは、2-6-0という車輪配置(先台車が1軸、動輪が3軸で、1Cとも呼ばれます)になっているテンダー機関車の呼称です。アメリカで1860年頃に生産が始まり、1910年頃まで1万1千両ほども製造されたそうで、名機と言えるでしょう。2-6-0+テンダーという機関車はアメリカに限らず、英国や日本でも製造されていますが、モーガルと言えばアメリカ、というイメージがあります。

モーガルという名前は生産開始直前まで続いていたムガール帝国から来ているようで、「おおもの」という雰囲気の意味です。これは当時の機関車としては牽引力が強かったことからのようです。

アメリカ製モーガルはかつて北海道で走っていて、開拓使時代の北海道の鉄道には欠かせない機関車でした。明治初期、札幌の北東にある幌内(ほろない:現在は三笠市幌内町)に優良な石炭が発見されて、その運び出しに鉄道線路が計画されました。そして、明治13年(1880年)に小樽港のある手宮から札幌までの区間が開通し、アメリカ人技師クロフォードが買ってきたポーター社製のモーガル2両が走り始めました。愛称は義経と弁慶です。

現在、義経は大阪弁天町の交通科学博物館から京都の梅小路蒸気機関車館(現・京都鉄道博物館)に移り、弁慶は神田万世橋の交通博物館からさいたま市の鉄道博物館に移りました。義経・弁慶の後に輸入された「しづか:静」は小樽交通記念館(現・小樽市総合博物館)に置かれています。

LGBは1968年にレーマン氏が設立したドイツの模型会社ですが、アメリカ車両を多く出していて、アメリカで相当の人気になっていました。今世紀に入ってから倒産の話が出てきて、予備パーツを買い込むなど、慌てましたが、2007年からメルクリン社のブランドとして復活しました。メルクリンも怪しくなりましたが、その後は落ち着いているようです。

LGBの車両は1/22.5という縮尺、軌間(線路幅)は45mm、会社名のGroßからGゲージと呼ばれていて、名前の通り大きな模型です。庭で走らせるために、電動ではありながら、雨に強い構造になっています。そのことから、車体の素材は厚めのプラスチック(樹脂素材は年代によって違うようです)でできていて、かなりの省略とデフォルメをしていますので、子ども向けのように見えますが、大きくて重い(4.1kg)ので、大人でも持ち上げるのはたいへんです。

銘板です。1884年のクック社製となっています。

ランニング・ボード(ボイラー横の歩み板)の裏にシールが貼ってあります。

LGB25周年のシールなので、1993年頃の製品なのでしょう。このLGBモーガル(型番:2018D)は1985年に出て、現在は廃版になっています。

変なところはいろいろあるようです。テンダーに薪を積んで、機関助手が運んでいる姿は可愛いのですが、製造された段階のモーガルは石炭のみを使い、薪を燃やす車両は存在しなかったそうです。保存車輌としては重油方式に改造されている場合があります。

この型番2018DのモデルはCooke社が鉄道会社DSP&P(Denver, South Park and Pacific Railroad)のために製造したそうです。Denver & Rio Grandeの鉄道名は、2018D発売後にいくつかの鉄道名のバージョンが売り出された一つです。初期のDSP&Pモデルではありませんが、カラーリングが好みという理由で選びました。

仮想的な姿とは言え、このモーガルはLGBらしい雰囲気が濃厚です。この車両を触るまでは、1番ゲージ(1/32)やHOゲージ(縮尺1/87)あたりの精巧さが好みだったのですが、Gゲージの楽しさからも離れられなくなりました。

最初はDCの電圧制御で始めました。LGBの線路や分岐器など一揃いをアメリカ通販で購入しましたが、制御器は自作しました。お気に入りのゼロセンター電圧計(中央がゼロで左がマイナス、右がプラスに振れます)は東京の小さな計器メーカーで作っていたものです。この制御器は分解したので、電圧計はNゲージ用に再利用しています。小さなトグルスイッチは分岐切替マシン用です。

後ろからの写真です。上に飛び出しているのは自動車用の手元照明を組み込みました。

15Vまで3Aの仕様で、少し電圧が低い目でしたが、部屋の端から端までの直線往復だけだったので、十分でした。

その後、機関車からサウンドを出す話題を知り、Phoenix社製のサウンドボード「BigSound 2K2」を注文し、テンダーに組み込みました。テンダーの底にはスピーカーの形の枠取りがありますが、穴は開いていませんでした。手前に置いているのがBigSound 2K2です。

この時までに、テンダー後部のカプラー(連結器)をKadee製品に替えていました。LGBのカプラーがおもちゃっぽかったからですが、その後、LGBらしさがいい、と思って戻しました。

DC仕様のサウンドボードには充電池が付いています。機関車が停止(電圧がゼロ)しても、何らかのサウンドを出すためです。写真の黄色いのが充電池です。

DC仕様では制御器で汽笛や鐘のサウンドを鳴らすことができないので、磁石でオンオフするリードスイッチを多用します。たとえば、機関車のピストンに合わせた音は、動輪の軸に磁石を貼り付けて、それにリードスイッチが反応して鳴らします。これはタイミングが正確なので、DCC仕様でも使う方法です。

次の写真は、ドリルでテキトーにスピーカー用の穴を開けた後、テンダーの車輪に機関車のブラスト音を出す磁石とリードスイッチを取り付けてみたところです。この車輪は動輪より小さいので、正確なタイミングにはなりませんが、機関車との配線がうまくできなかったためです。この頃は配線ケーブルとコネクターのレパートリーがありませんでした。

機関車の裏面です。

左が前です。第1動輪と第2動輪の間に金属板が付いています。これは集電板で、LGBの動力車の特徴です。電気を左右の車輪からだけではなく、この金属板を線路に接触させて、確実に集電できるようにしています。
右端の第3動輪の間にリードスイッチを2つ付けました。汽笛用と鐘用です。これらは線路の間に磁石を取り付けて、その場所を通るときに鳴るようにしました。

このように、DC仕様ですと、サウンドの自由度が低いように思いますが、汽笛や鐘は規則で決められた場所で鳴らしますし、また、2K2は入力電圧変化でサウンドパターンが変化するようなプログラムが入っているので、なかなか面白いものです。

2005年には、車両のDCC化を進めましたので、モーガルにESU社のDCCボードLokPilot XLを組み込みました。

BigSound 2K2のボードをテンダーから移し、LokPilot XLと一緒に機関車のボイラーの中に押し込みました。上がLokPilot XL、手前がBigSound 2K2です。

テンダーの中がスピーカーだけになってすっきりしましたが、今なら、2枚のボードをテンダーに入れたでしょうね。機関車のボイラー内部はギリギリの容量でした。

テンダー車輪に取り付けていた動輪回転同期用のリードスイッチも動輪に移しました。
ついでに、運転席に室内灯を取り付けました。これだけがLEDです。

以上で、初めてのDCC化は完了です。

この記事を書く機会に久しぶりに掃除と整備をしました。
動輪はけっこう汚れていました。

機関車の先頭にあるフラッグポールが剥げていました。

LGBは金色にメッキしている樹脂パーツが多く、経年変化でどうしても剥げてきます。買い置きがあったので交換して、きれいになりました。最近はメッキ風塗料があるので、その準備もしています。

以下は、現在のレイアウトでの走行動画です。すべて音が出ます。

ヤードを出発します。

牽引しているのは、LGBの客車と大型カブース(客室付き車掌車)です。モーガルが出る前のアメリカン(4-4-0)型という西部劇に出てくる機関車のほうがぴったりかもしれません。
客車の内部です。初めて車両に室内灯とフィギュアを入れました。室内灯の取り付けが荒っぽいです。

このサイズの模型になると、客車内にトイレとストーブまで置かれています。

フィギュアを入れると、なかなか楽しいものです。

トンネルから出てくるところです。

最後は、駅に到着です。

これらの動画では、速度しか手動制御していません。汽笛などの音はBigSound 2K2に組み込まれている速度感知プログラムで鳴っています。

このBigSound 2K2はLGBのモーガル用サウンドというので選んだのですが、汽笛音が迫力ありすぎ(和音構成)と感じていました。調べてみたら、ニューメキシコ州にあるCumbres and Toltecという保存鉄道の4-6-0あたりの機関車からの録音だとわかりました。

アメリカの保存鉄道でモーガルが走っているのをYoutubeでチェックしたら、けっこう2K2と同じような汽笛が鳴っていました。その後、Phoenixのサイトに別のモーガルのサウンドが加わりましたが、その汽笛音は単純な昔風(単音か二音)でした。

小樽のアイアンホース号や、京都で二度目の復活を果たした義経の汽笛は昔風の単音です。このあたりがオリジナルなのでしょうか。まあ、汽笛もいろいろあるようで、現在のサウンドに慣れてしまっているので、これはこれでいいことにします。

LGBモーガルは当模型鉄道での車歴がそろそろ20年になりますが、現在も快調に走っています。

小さな駅の外灯

レイアウトの奥にプラットホームだけの小さな駅を置いていました。余っていた板を切り取って塗装しただけです。

DSC02564

このホームに、買い置きしたままになっていたLGB製の街灯(LGB 5056)を組み込むことにしました。
こういう2灯が吊り下げられたもので、ちょっとオーバースケールの感はあります。

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台座を付けたままでは奥行きのないホームには置けません。
台座をはずして、台座のベース部分を切り取って、ホームに埋め込むことにしました。

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台座をマストの下部と同じ六角形のサイズに切り取り、台座をホームに埋め込む穴を開けました。こんなに大きな切りかけは不要なのですが、使い回した板に切り込みがあったためです。塗装の前に埋めました。

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台座部分だけをはめ込んで接着し、塗装しました。これで出来上がりです。

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ホームを置き、マストを台座にはめ込み、フィギュアなどを置いて、さあ確認、と電源を入れると、右側が消えています。

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電球を調べようとしましたが、LGBらしく、電球ソケットが接着剤で固定されていて、電球を簡単に外せません。傘を分解しながら、電球をLEDに交換するほうが今後が気楽だと判断しました。
電球のLED化は10年ぶりくらいの工作です。大阪でのレイアウト製作が一段落しつつあることの証しでしょう。

LGBの製品マニュアルにはパーツの図だけで、分解の手順は書かれていません。自分の備忘録として、手順を記しておきます。

1.マストを台座から引き抜いて、マストの下部にあるカバーを外します。これは爪が見えているので簡単です。

2.マスト中央部にある小さなクリップを外します。これは小さなマイナス・ドライバーで引っかけます。

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このクリップはこんな形なので、2箇所に隙間が見えます。その隙間にドライバーを入れてねじると離れます。

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パチンと外すと、たいていは飛んでいきますが、割れることはないと思います。これでマストが半分ずつに分かれます。

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3.マストの上部は爪でとまっていますが、配線に気をつけながら一本ずつ引き抜くと簡単に外れます。
マストから出てきた配線です。途中で1回巻いてあります。これをほどく必要はありません。

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4.一番の手間はトップの蓋をはずすことです。ここは接着剤で固定されています。アクリル・カッターくらいの丈夫な歯を入れて、少しずつ広げていきます。普通のカッターを使うと刃が曲がって、うまくねじれません。

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5.金属のソケットは白いカバーに接着剤で固定されていますので、上から軽くたたくと出てきます。
以上で分解は終了です。

この街灯は2つ買っていたので、ばらす前と後の写真を撮りました。2つともLEDに交換します。

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6.配線を繰り出しておいて、ソケットから1cm程度で配線を切断します。ソケットと電球は不要なのですが、再利用できる状態で残しておきたくなります。ソケットが真鍮製だからでしょうか。

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7.LEDに交換します。今回は5mmの電球色で、2本は何かから外したものを再利用しました。LED関連パーツはわんさと在庫を抱えています。

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LEDを取り付けたら、傘の中に入れますが、接着剤で固定する必要はありません。ちょうど傘の中に入っている状態で配線を上部の溝に入れていくだけです。

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8.ブリッジ・ダイオードとコネクターピンの間には1~2cmくらいの配線を追加しないと、マストの裏部分で干渉します。また、ピンには団子くらいにハンダをのせておかないと、ピンが抜けることがあります。

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9.ブリッジ・ダイオードの上に15mAの定電流ダイオード(CRD)をつなぎました。抵抗でもいいのですが、電圧を気にしないでいいので、たいていはCRDを使っています。
その先の配線は元のままですが、CRDの長さ分。茶色を短くしました。茶色を+に、黒を-につないでいます。

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以上で交換作業は終わりです。すべてを元通りに戻しますが、トップの蓋は接着剤なしで、はめ込むだけにしました。

LEDに交換してからの雰囲気は次の通りです。横に見えている上からの配線を隠さないといけないですね。

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暗くしてみました。元の電球より少し白っぽいですが、悪くはありません。

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ちなみに、PMRRというのは当模型鉄道の名称:”Plumtown Model Rail Road”の略です。
看板のつもりです。