南海凸電 完成

2022年10月14日

今日は鉄道の日(今年は鉄道開業150年記念日)なので、Gスケールの南海凸電がなんとか完成したという記念日にもしました。大阪での工作再開が2018年、その15年くらい前にボンネットを作り、駆動系やフレーム板などを用意したので、開始から延べ20年かかったことになります。まあ実際に継続的に製作したのはこの4年ですが、それでも長い時間がかかりました。駆動系以外はスクラッチビルディングになったため、経験の無さから、試行錯誤ばかりが続いた印象です。

この記事では完成した姿と走行を写真と動画で記録し、いずれ別記事で製作のトピックを取り上げていくことにします。

モデルとしたのは南海電鉄電気機関車(凸型電機)ED5101形です。自分で写した同形機関車の写真です。1960年代初期の南海本線高石町駅近くの踏切で、和歌山に向かっている姿です。

型番はED5107としました。この車両は1923年(大正12年)に南海電機第2号形(1005-1014)の1両として堺市にあった梅鉢鐵工所(後に帝國車輛工業、東急車輛製造、移転後の跡地は現在ショッピングセンター・アリオ鳳)で製造されました。帝國車輛時代末期には高校からの帰りに工場内を覗いていたことがあります。

50年以上も現役だったので、製造後に多くの改造を受けています。1974年(昭和49年)に廃車となり、廃車後はしばらく「さやま遊園」で保存されていたそうです。今回の製作モデルはうろ覚えの1970年(昭和45年)ころの晩年の設定にしたつもりです。

サイズは全長428mm(カプラー含まず) 520mm(LGBカプラー両端)、全幅100mm、線路からの高さ155mm(屋根まで)170mm(パンタ下げ)245mm(パンタ上げ)です。実物は全長11,455mm、全幅2,590mm、全高4,040mmですから、1/26くらいのGスケールです。

こちらの側面は山側(運転台側:左が和歌山、右が難波)です。開いた窓から見える運転士は和歌山を向いて座っています。

逆サイドの海側(左が難波、右が和歌山)です。

和歌山方面行きの斜め姿(山側)です。

難波方面行きの斜め姿(海側)です。

パンタグラフを下げた姿です。

屋根(山側)です。

上物を外すと、キャビン内部とサウンドデコーダー(ESU Loksound XL V3.5)にアクセスできます。室内の作り込みは簡素です。

カプラー(連結器)は2段にしています。上側(実車の連結器の位置)は雰囲気を出すためにBachmannの自動連結器を取り付け、その下にLGBのカプラーを取り付けました。LGBのカプラーが南海のATS(自動列車停止装置)の車上子(車両側の装置)のように見えるので、違和感はそれほどありません。この位置がLGBの基準の高さで、他の車両を連結牽引するのはLGBのカプラーを使います。

重さはちょうど2.0kgになりました。

サウンドデコーダー(Loksound XL V3.5)をチェックするため、テスト用走行台に載せました。

使用したサウンドファイルはESUの提供するヨーロッパの古い電気機関車ですが、最初に鳴らした警笛(単音)は南海凸型電機の実車映像サウンドを加工しています。動画を再生すると大きな音が出ますので、ご注意ください。

次はテスト用走行台で走行するサウンドです。大きな音が出ます。

走行動画をいくつか選びました。すべてサウンドデコーダーの大きな(うるさい)音が出ます。

レイアウト上での試運転の追っかけ録画です。メルクリンのMAXIシリーズ無蓋車をLGBのカプラーで牽引しています。音が出ます。

トンネル出口でパンタグラフが架線から離れる様子です。音が出ます。

走行確認の最後、レイアウトを一周する姿を後ろの無蓋車にカメラを載せて撮影してみました。これも大きな音が出ます。

駆動系にバネが入っていないことによるカクカクとした揺れは少しありますが、走行に大きな問題はなく、線路とトンネルの整備くらいでよさそうです。

走行速度とサウンドとの同期が取れていないような気がしますし、そもそも走行サウンドがこんなものだったかどうかの記憶はありませんので、サウンドなしで走らせることが多いでしょうから、気にしないでおきます。甲高い警笛だけはよく覚えていて、とても気に入っています。

Bachmann 38-ton Shay

Bachmann(バックマン)製のGゲージ機関車、シェイ(38-ton 2-truck Shay)です。

シェイ(Shay)という形式の機関車は、アメリカ人のEphraim Shayが1877年ころに発明し、シェイ氏の特許の元でLima(ライマ)社が主に製造していました。機関車中央部に置かれた蒸気機関のピストン上下運動を回転運動に変えて、前後の台車にシャフトとギヤ(傘歯車)で動力を伝達して走ります。ギヤ式機関車という分類です。

片側にだけピストンが並んでいて、左右が非対称の面白い機関車です。すべての台車の全輪駆動なので勾配と曲線に強く、用途は森林業です。

中央にあるピストン部分だけのアップ写真です。自動車に使われるレシプロエンジンのような、面白い仕組みです。ピストンの下に前後の台車に回転を伝達するシャフトが見えています。

台車への動力伝達部分です。笠歯車が見えています。

まあ、電動模型ですから、動力伝達の方向は逆で、モーターはそれぞれの台車に組み込まれていて、シャフトとピストンを動かしています。

左右が非対称になっている雰囲気を眺めてみます。
正面です。

ボイラーが右に寄っています。最初の写真がピストンのある側面でしたので、逆の側面です。

こちら側には複雑な機構はありません。ランニング・ボード(ボイラー横の通路:歩み板)の下にホースが取り付けられています。これは自力で水を汲むためのようです。

シェイ機関車は、重さと、連動して駆動される台車(truck)の数で分類されていて、この機関車は38-ton 2-truck いう中くらいのサイズです。小さいのは6トンから、大きいのは160トンまで、2台車から4台車まで、総計2,770両が製造されたそうです。

シェイ機関車の実物を見たことはありませんが、シェイの後に開発されたギヤ式機関車で、モト・グッツィ(Moto Guzzi)のオートバイみたいなV型シリンダーが特徴のハイスラー(Heisler)機関車は、1982年にワシントン州のレイニエ山の景観鉄道(Mount Rainier Scenic Railroad)で触らせてもらったことがあります。この機関車は3つの台車を駆動しています。

現在、この鉄道にはギヤ式の機関車(シェイ、クライマックス、ハイスラー)が揃っているようですが、当時はハイスラーしか見かけませんでした。BachmannはハイスラーのGゲージ模型も出していましたが、すでに廃版となっていて入手困難でした。

Ely-Thomas Lumber Co.という会社の6番機関車は、1927年にLima社が製造し、いくつかの会社を転々として、1947年にEly-Thomas Lumber Co.が購入したようです。その後、1955年以来、ニュージャージー州の交通博物館が保管しており、現在は修理を待っているようです。

Lima社が製造したシェイ機関車が日本の森林鉄道でも走っていたことがあるようです。「日本における森林鉄道用蒸気機関車について」(小熊米雄 北大農学部演習林 1961)を読むと、1907年(明治40年)製造の13トン級シェイ機関車が1908年に津軽森林鉄道に配置され、期待はずれの性能だったことが紹介されています。

小熊氏が関係者から聞き取りした内容が面白いので、引用します。
「この機関車はボギー式になっていて、 当時においては珍らしいものであって、 これは牽引力が強大で山地急曲線が円滑であるという理由で試験的に採用されたが,使用の結果は駿走軽快ならず,且っシリンダが1側にあって垂直に動き,枕木を損傷するとか,小砂が飛び込むとか色々取扱い上苦情が多く」、また「運材列車は1回牽いたが,丸太が抜けたので,その後は専らバラス撒布に使った」

その後、1918年に高知県の高知大林区署へ移管されたこと、高知でも期待はずれの性能だったこと、1925年に廃車されたこと、などが記されています。なお、途中で台湾の阿里山に移った可能性も指摘されています。

日本では期待はずれの機関車だったようで、日本の線路や整備などが性能を発揮させられなかったのか、よくわかりませんが、アメリカではそれなりの評価が得られており、現在も少なくとも116両が保存されているようです。

この模型を作っているBachmannはフィラデルフィア発祥ですが、現在は中国(香港)系のメーカーで、アメリカ車両を中心に、Nゲージ、HO、そしてこのサイズも作っている、メルクリンに対抗しようとしている勢力と言われていましたが、まあ、低価格路線です。そのことから、当鉄道のHOではDCCの分岐器はすべてBachmann製にしています。

このサイズは一般にはGゲージと呼ばれていますが、BachmannはLarge Scale(Big Hauler)と呼んでいます。元来のGゲージであるLGBの縮尺1/22.5に対して、Bachmannは縮尺 1/20.3で、一回り大きいサイズです。

購入当時(今世紀初頭)、Bachmannの車両模型は、評判はそれほど悪くないのに、なぜかアメリカの多くの模型店で定価の5割引以上という価格設定になっていました。これはeBayでの購入でしたが、本体271ドル+送料25ドルで、NかHOの機関車なみの値段でした。

まあ、LGBのがっちりした作りと比べると、簡易で安っぽい感じを受けますが、精度は悪くありません。今でも、他のメーカーと比べると値引率は高いようです。Bachmannのこのモデルは廃版となって、現在は55-ton 3-truckのシェイが高価な値付けで出ています。

届いたシェイはとても大きく、重く(4.4kg)、そして華奢でした。華奢というのは、全体のサイズ・重さからすると、プラスチックのパーツが細かく薄いという意味です。LGBなら厚いプラスチックで作っているようなところが薄いので、スケール感はあるものの、手で持つときに気を遣います。その分、LGBなら省略しているようなパーツが造り込まれています。基本はプラスチックですが、金属パーツやゴム、糸なども使っているところがあります。

サウンド・デコーダとしてESU社のLoksound XLがシェイのサウンドをライブラリとして持っていたため、DCC化するのはとても楽で、スピーカーもデコーダーも炭水庫の中に入れました。

スピーカーです。

なかなか迫力あるサウンドです。ここでコントロールしているのは、Android用のアプリ「Ecos Controller」です。とても便利です。以下の動画は音が出ます。

前照灯と尾灯はLEDでしたが、色味が悪いので取り替えて、運転室灯をLEDにして針金でカバーを取り付けました。

この模型の連結器にはバックマン式の自動連結器が取り付けられていました。

でも、LGBの車両も牽引させるので、LGBの連結器(簡単なカプラー)に取り替えました。

これでLGBの連結切り離し機も利用できます。LGBのカプラーはオモチャっぽいのですが、これはこれで嫌いではありません。

走行中の動画です。

札幌の庭木で作った木材がありますので、近いうちに貨車に積み込んで走らせる予定です。