3. アメリカのM1免許

2021年3月2日

1990年8月、カリフォルニア州サンタバーバラでフィエスタ(スペイン祭)の警備に来ていた白バイ隊員にいろいろと話を聞いていました。

この頃のカリフォルニア州の白バイはカワサキのKZ1000Pでした。このシリーズのオートバイは日本でも放映されたテレビドラマ「CHiPs:白バイ野郎ジョン&パンチ」でお馴染みでした。もちろん彼も観ていて、交通警察官になったのはその影響もあったと笑って言っていました。

アメリカでの長期滞在では中古車を買うため(保険に入るため)に自動車免許を取らなければなりません。10年前と同様に自動車免許をすぐに取得して、ホンダ・シビック・シャトルを購入して乗っていました。

翌1991年3月、仕事が一段落して1週間ほど休めることになり、オートバイの免許を取っておこうと思い立ちました。アメリカでオートバイに乗る予定はなかったのですが、好奇心と後学のためです。オートバイ免許には2種類しかなく、クラスM2が150ccまでのモペッドやスクーターなど、クラスM1が日本の大型自動二輪免許に該当しますので、M1を受けます。

近所にあるDMV(Department of Motor Vehicles:自動車の登録と免許を扱う役所)に行って、自動車免許と社会保障番号(Social Security Number)を見せて申請し、その場で簡単なペーパーテストを受けて合格したらオートバイの仮免許をもらえます。これで路上運転練習(夜と高速道路はダメ)して技能(実技)試験を受けることができます。国際免許でも可能だと思います。技能試験は予約制です。

自動車免許と同様に、オートバイ免許でも技能試験を受けるためには自分でバイクを用意しなければなりません。レンタルバイク店を探しましたが見つからず、住んでいたゴレタ(Goleta:サンタバーバラの隣町)にあったゴレタ・ホンダ(ホンダオートバイ専門店)を訪ねて、店主のおじさんにM1免許取得のためにバイクをレンタルさせてもらえないか、と尋ねてみました。すると、レンタルはしてないけど、スクーター(ホンダのフリーウェイ 250cc)を無料で貸してあげるよ、とびっくりするような返事をいただきました。技能試験にはヘルメットも必要だから貸してあげるとのことでした。

ご好意に甘えて、ヘルメットとフリーウェイ 250を4日ほどお借りしました。

アパートの駐車場でシビックの前に駐輪した後ろ姿です。ホンダが並びました。

これで技能試験を受けることができます。自動車の技能試験は一般道路上で試験官が同乗して行われますが、オートバイの技能試験はもっと簡易です。カリフォルニア州ではDMVの一角に、円と直線が描かれたオートバイ技能試験用コースが設置されています。

下調べのときの写真です。オートバイ技能試験コースの上に駐車しています。試験をしていない時間は自由に立ち入りできて、試験(受験者)は少ないので、ほとんど空いています。シビックの後方にあるのがDMVの建物です。

DMV発行の冊子に載っているコース図の模写です。二重直線の間隔は1フット(=30cm)、二重円(同心円)の間隔は2フィート(=60cm)、円の外側の直径は24フィート(=7.3m)です。2つの二重直線の間にある丸はコーン置き場です。

技能試験では最初にオートバイのスイッチ類(エンジンの始動・停止や灯火・ホーン)の機能(知っているかどうか程度の)チェックがあり、それから走行します。2つの二重直線の中央に立てた5本のコーンの間をスラロームしてから二重円の線内を2周してスラロームで戻ってくるのを左右1回ずつ、一方の二重直線の線内からスタートして二重円の線内を2周して別の二重直線に戻ってくるのを左右1回ずつ、以上だけです。どれをするかはその場で指示されます。何も免許を持っていない場合は観察テストというのが加わって、試験官が見える範囲で、一旦停止などのあるDMVの敷地内外を周回させられます。

前輪が二重線をはみ出す、足を着く、コーンを動かす、観察テストで一旦停止ルールを守らない、などで失格になります。失敗しても、一回の試験費用(30ドルほど)で日を変えて3回受験できます。それでもダメならまた試験費用を払うことになります。

簡単なコースなのですが、お借りしたスクーターは無段変速でクラッチが無く、ニーグリップもできないので、正確に円を回るのはけっこうむずかしく思いました。スーパーカブに乗っていた頃なら簡単だったかもしれません。試験前日にコースで30分くらい練習したら、まあ問題なく回ることができました。

技能試験の動画はYouTubeにいろいろとアップされていますので、短いものを共有リンクさせてもらいました。この動画はカリフォルニア州の走行試験の一部だけですが、なかなかカジュアルな雰囲気の試験官で、楽しそうです。音が出ます。

技能試験の方法は州によって異なります。かつて住んでいたマサチューセッツ州のテスト風景(共有リンクしたYouTube動画)を観ると驚きます。基本は同じようですが、内容はずっと大まかだし、場所はショッピングモールの駐車場で、固定のコースではありません。駐車場内の一般車両や通行人が通る場所です。それに受験者のバイクがハイ・ハンドルというのも大したものです。各州の独立性とアメリカ合衆国のおおらかさを感じます。これも音が出ます。

何とか、1回で合格しました。DMV事務所でM1免許を取得したという紙を免許証の裏にホチキスで止めてくれました。

ホチ止めの証明書は有効2カ月なので、その間に免許証を作り直してもらいます。その後の免許証には普通自動車Cと合わせて「CLASS: CM1」と記載されるようになりました。免許証の上の部分だけの写真です。

すぐにゴレタ・ホンダまでワインを持参して無事に合格できた報告とお礼に行きました。記念撮影です。大感謝です。残念ながら、この店は現在はなくなっているようです。

この時にしていたベルトとバックルが今回のレザークラフト入門の素材でした。

「4. TDM850」へ続く