The Quartet NL コンサート

9月4日、自宅から歩いて15分ほどの文化センターに本格的なジャズ・コンボがやって来ました。カルテットNL(The Quartet NL:NLはオランダ=The Netherlandsの略)と名付けられていたので、よくわからなかったのですが、オランダ・ジャズの大御所ハン・ベニンク(Han Bennink)がメインの4人です。他の3人は知らなかったのですが、オランダの実力者たちのようです。

なかなかセンスのいいポスターです。今回初めて知りましたが、関西の無料ジャズ雑誌「WAY OUT WEST」を出している方が毎号の表紙を描いているそうです。

ハン・ベニンクは、エリック・ドルフィが亡くなる直前にオランダでスタジオ録音した最後のアルバム「ラスト・デート LAST DATE」(1964)に加わっています。この時、ハンは22歳ですが、すでにオランダ・ジャズ界の有望ドラマーだったようです。写真を撮ろうと、レコードとCDを引っ張り出したら、パスカルがチェックに来ました。

なつかしい、有名なアルバムです。色が褪せ始めています。このレコーディングには今年3月に亡くなった、オランダ在住のピアニスト、ミシャ・メンゲルベルク(Misja=Misha Mengelberg)も参加しています。ミシャとハンはずっと一緒にやっていたようです。このレコードを買ったときは輸入盤しかなくて、素材の紙はひどいものですが、イラストはお気に入りです。このイラストはブラウン系の着色がどうもオリジナルのようです。

大阪でのジャズ・コンサートは2013年5月に新装なったフェスティバル・ホールまでキース・ジャレットを聴きに行って(翌年はトラブルがあったようですね)以来です。キースとは集客力が違うのは仕方がありませんが、知る人ぞ知るというジャズ・ミュージシャンのコンサートが大阪市外で開催されて、400人以上が入るホールがほぼ満席でした。これは大したものだと思います。さすが、大阪はジャズ・ファンの層が厚い、そして関係者の努力ですね。

すべて自由席ということで少し早い目に入ったので、中央3列目に座ることができました。楽器の生の音が両脇のPAスピーカーよりもよく聞こえました。このサイズのホールだと、PAはなくてもよかったような気がします。

結成グループのメンバーで、ハンと同世代のルード・ヤコブス(ベース)が病気で来日できなかったそうで、代役はエルンスト・グレルムになりました。グループとしては、2人ずつ2つの世代で構成されているというのがウリだったようです。まあ、エルンストは60代に突入しているようですから、OKですね。

ハンはカラフルな半袖シャツに短めのズボンというポップな姿ですが、他の3人は昔っぽいジャズ・ミュージシャンらしいスーツ姿です。最近はジャズ・ミュージシャンのスーツ姿は少なくなりましたね。札幌で、同じくオランダの The European Jazz Trio を2回ほど聴きに行きましたが、彼らはスーツ姿でした。まあ、ビッグ・バンドやイージー・リスニング・ジャズは今でもスーツが合うのかもしれません。

皆さん、最初から飛ばしていました。久しぶりのグルーブ感でした。今回の演奏はすべてミシャ・メンゲルベルクの曲だという紹介がありました。「LAST DATE」で演奏されている曲も入っていました。他は知らない曲でしたが、すべてメロディーラインもわかりやすく、古いタイプと言うと語弊はありますが、若い頃に聴いていた雰囲気で楽しめました。

注目のハン・ベニンクは、タムタムをミュートするために足を使うとか、舞台に座って床を叩くとか、口にスティックを入れて歯で音を出すとか、ちょっとスラップスティックの感がありますが、けっこう前からやっていたようで、リズムだけではなく、音程や音質に敏感な人のようですね。普通なら、タムを増やすとか、カウベル、ウッドブロックなどを加えるとかするのでしょうが、与えられた環境を極限まで利用できる達人で、ミシャの曲をよく知っていることがわかる叩き方をしていると感心していました。かつて、ミシャとのデュオでピザの箱を使っている映像を見たことがありますが、このあたりになると賛否両論のようです。

演奏中、スネアドラムやハイハット・シンバルの金具が不調(まだまだ、力が有り余っている感じ)のようで、ずっと調整していましたが、その合間に時々、タムを一打するタイミングがすばらしいのが印象的でした。

楽しんだ帰りがけにCDを買って、長い行列に並んでサインをもらっておきました。4人ともにこやかに応対してくれていました。

日本と似て、オランダには、卓越したミュージシャンがいるだけでなく、多くのジャズ・ファンがいますね。オランダにジャズ・ファンが多いというのは、30年ほど前にオランダにいた時に知りました。友人の伯父さんの趣味がアマチュア無線であるのみならず、ジャズも好きだったのは、同好の士と喜びました。ハーグ(今はロッテルダム)で開かれるノース・シー・ジャズ・フェスティバルに行かないかと誘われたことがあります。ロック・フェスティバルなみに、数千人の観客が集まるということでしたが、数日の泊まり込みで行くというので、残念ながら、あきらめました。

最近は YouTube に珍しい貴重な動画がアップされていて、ミシャとハンが1968年に演奏しているテレビ映像を観ることができます。昔は演奏する姿はレコードの音とジャケットから想像するしかなかったのですが、楽しい時代になりました。

YouTube のリンクは使っていいそうなので、貼っておきます。背景にハム・ノイズが入っていますが、いい演奏です。

この映像には、今回参加できなかったルード・ヤコブス(ベース)も出ています。この映像はルードのサイトからのアップのようです。みんな若くて、細身で、スーツ姿ですね。