鉄道模型のNWSLが消えそう

2019年7月21日

最近はNWSLで検索すると、アメリカ女子サッカーのプロリーグ(NWSL: National Women’s Soccer League)ばかりが出てきますが、ここでのNWSLは「NorthWest Short Line」という、ワシントン州シアトルで鉄道模型のパーツやツールを作っていた小さなメーカーの名前です。2008年にオーナーが変わってモンタナ州ハミルトンに移りました。そのNWSLが廃業するというのを知ったのは、7月に入ってから久しぶりにホームページを眺めたからでした。

トップページに、誰か継いでくれる人が現れない限り、2019年8月30日で事業を終了しますので、新規注文は7月1日で打ち切ります、というメッセージがありました。もう注文はできないし、eBayからもNWSLの製品はほとんど消えています。

NWSLは初めは真鍮模型の輸入販売をやっていたそうですが、HOからGゲージまでの車輪やギヤなどの交換部品を独自に揃えるようになり、面白いツールも出しているので、世界的にファンが多いようです。私も何度か車輪やツールを購入したことがあります。

ツール類は「手作り」みたいなものが多いですね。
購入したツールのベンダー(THE BENDER)です。鉄の両刃をギロチンみたいに上からネジで押して、下に入れた薄い真鍮板(0.5mm厚以下)や真鍮線をくっきりと90°まで曲げることができるというものです。実際には0.3mm以上の厚さで90°は無理で、45°くらいまでです。後はペンチなどで曲げます。有効幅は78mmです。これにはシアトルの地名が入っています。

確かにくっきりと曲がりますが、90°なら、ペンチかバイスで咥えて軽く板金ハンマーで叩けば、ほとんど同じくらいになります。むしろ、このベンダーの利点は、複数の板を正確に同じ位置で曲げることができることでしょう。

製作中のGゲージ南海凸電の乗務員乗降ハシゴを作るために正確な幅で折り曲げたいので、ベンダーを使いました。0.4mm厚8mm幅の2枚をセットします。

左側がベンダーで曲げた状態、右側はペンチで90°に曲げた状態です。

右は完成品です。

これで価格は$50でした。それなりに便利ですが、必需品とは言えないかもしれません。

次はプラー(THE PULLER)で、車輪を車軸から抜くためのツールです。これもシアトル時代です。Gゲージでも小さな車輪なら使えます。車輪を下の枠に引っかけて、上からネジで車軸を押していきます。

動作的にはプラーではなくて、プッシャー(Pusher)じゃないのかと思ってしまいます。車輪を車軸に挿入する場合は、ネジの先に車軸の入る円筒を取り付けると、車輪を押すことができます。これはよく使いました。これも金工の知識があれば自作できそうですが、価格は$25と安価です。

もう一つは、HOのクォータラー(THE QUARTERER)です。これはハミルトンに移ってからの説明書になっています。

クォータラーは蒸気機関車の動輪対に付いているクランクを90°に位置合わせするツールです。これまで使う機会はなかったのですが、一度トライしてみたいと思いつつ、不調の機関車がないので、そのままになっています。これは$40です。なお、少し大きい動輪用のQUARTERER II($140)やOゲージ用のQUARTERER III($186)もあるようです。

購入製品ではありませんが、真鍮板にリベット表現が簡単にきれいにできるというのを知ったのもNWSLの製品でした。真鍮板に小さな突起を作るリベッターです。NWSLの製品はTHE SENSIPRESS+($130)とTHE RIVETER($90)の組み合わせになって、ちょっと高すぎると思っていたら、ニュー・ジャージー州にあるMicro-Markという大手模型工具会社の通販セールがありました。Micro-Mark社製のリベッターが半額近くになっていたので購入しました。

NWSLの製品写真と見比べてみると、ネジ穴の位置が少し違うくらいで、瓜二つです。購入後、しばらく経ってからNWSLのホームページを眺めたら、「Micro-Markという大きな会社が我々の小さな会社が発明・発売したリベッターを模倣して販売している。我々の死活問題であるから即座にやめてほしい!」という抗議のメッセージが出ていました。こりゃ申し訳ないことをしたという気持ちになりました。経緯は知りませんが、その後、Micro-Markの製品リストからリベッターは消えています。

鉄道模型のパーツやツールというニッチで興味深い製品を家内工業的に作ってきたNWSLが消えるのはとても残念ですね。ホームページにも鉄道模型のフォーラムでも、誰か会社を継いでくれる人はいないか、という話が出ていますが、現在のところ、廃業予定の文言は変わっていません。

追記(2019-08-27)
今日、確認のためにNWSLのサイトを眺めてみたら、8月19日付のアナウンスで、NWSLの従業員の一人が会社を引き継ぐことになったそうです。9月3日からNWSLの連絡先は同じモンタナ州のキラ(Kila)に移って再開するとのことです。よかったよかった!

原鉄道模型博物館 再訪

2015年6月18日、東京からの帰途、少し時間があったので、3年ぶりに訪問しました。
展示に大きな違いがあるようには感じませんでしたが、写真撮影禁止が解かれていました。また、原信太郎氏製作の車両もスケジュールで走っていたのは嬉しく思いました。でも、日頃の整備が大変でしょうね。

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特に興味を引いたのは、この広いレイアウトでの列車運転ができるようになっていたことです。これは楽しい企画です。

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この運転台でE03が牽引する列車を車載カメラの映像を見ながら運転できるというものです。2台のセットがありました。予約は空いていたようでしたが、遠慮しました。
動画です。

ドイツの電気機関車を日本の電車制御器(古いタイプですが、本物のようです)で運転するというのはちょっぴり苦笑いではありますが、汎用性を考えると、いい選択でしょうね。ともかく、大型画面のライブ・ビューのきれいさ・なめらかさには驚きました。それが際立つのは、細部まで作り込まれているシーナリーがあるからですね。これでヘッドセットを付けたら機関車のモーター音が聞こえてくる、となれば最高でしょう。
下の写真はビデオ画像からの切り取りなので粗いですが、カメラを搭載している機関車正面は、カメラ用に前面窓の中央枠をはずしているあたり、RocoがHOで出したkamera-lokのE103とそっくりです。

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あとで、業務用画像送受信システムを使っていると教えていただきました。
この車載カメラの映像を眺めていて、ライブ・ビュー導入が、わが模型鉄道の次の課題になりそうな予感がしました。

いずれ、入線ホームや経路選択のスイッチ操作などの担当も可能になると面白いでしょうが、事故を起こさないシステムが必要になりますね。

原信太郎氏製作の「或る列車」は、JR九州が実際に作っているというのを聞きましたが、はたしてどんなものなんでしょうか。模型の味は格別です。

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原鉄道模型博物館

2012年10月11日、最近オープンした原鉄道模型博物館(横浜)に行ってきました。普段は撮影禁止だそうですが、ちょうど写真コンクール開催とのことで、撮影ができました。

なかなかの迫力です。走っていたのは、メルクリンなどの1番ゲージ製品のように見えましたが、どうなんでしょうか。DCCかなと思って、係の人に聞いたら、すべて架線集電のDC電源だとのことです。

レールの継ぎ目が列車の通過音を心地よくしています。別室にあった原信太郎氏の製作車両は、「目の保養」でした。

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細部もよく造り込まれています。

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扇形機関庫です。転車台が動くのは見ませんでした。

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ビーチはちょっと狭いかな?

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谷底をのぞいている人がいます。

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直線がこれくらい長いのはいいですねえ。ただ、架線柱が多くて、下からのぞかないといけないようです。

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これくらいの半径の曲線がうらやましい。

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原信太郎氏のことは芦屋に住む友人から聞いていましたが、製作車両の実物を初めて見たのは比較的新しく、2006年8月12日、出張に出かけた大阪で国際鉄道模型コンベンションが開催されていたときでした。時間が取れたので、訪れてみました。会場をうろついていて、ある一角に、まったく違う世界の模型が置かれていました。

オリエント急行に使われたワゴン・リ(Compagnie internationale des wagons-lits)の木造食堂車です。

同じ1ゲージでも、アメリカの”Fine Art Models”などの製品とは違って、精密さだけではなく、個人の手作りという、ゆらぎのある柔らかさを感じました。ああ、こんな世界があるんだ、という心地よさでした。残念ながら、訪れた時間にはご本人はいらっしゃらなくて、お話をうかがうことはできませんでした。

小樽交通記念館のモーガル

2005年5月22日、LGBのモーガル機関車を整備していた頃、当時の小樽交通記念館(現在は小樽市総合博物館)で実物のモーガルが走っていることを知り、訪ねてきました。前回この施設を訪れたのは北海道鉄道記念館の時代で、20年くらい前です。

きれいな建物に変わった玄関には復元保存されているモーガル「しづか」が展示されています。

大阪の義経、東京の弁慶と同様に、輸入当時に復元しているそうですが、当時はカラー写真がなかったので、カラーリングなどの考証には相当の苦労があったのでしょうね。
なかなかの可愛さです。

ヘッドライトはオイル・ランプです。当時の夜は真っ暗だったでしょうから、こんなライトで前方が見えていたのでしょうか。それとも、前方を照らして見るというより、機関車が来ているのを確認するくらいの用途でしょうか。

圧力計が一つあるだけのシンプルな運転席です。

投炭口は小さいですね。LGBモーガルのように、大きな薪をくべるのは不可能でしょう。

銘板です。

こんなものを自宅の模型室に置いています。

「しづか」の銘板の実物大レプリカです。苗穂駅横のJR関連会社で売っていました。一時だけの特製品かと思って買ったら、今でも通販しているようです。まあ、日本にある2-6-0モーガルの銘板は多くが復元工事の際に再製作されたようですから、どれがオリジナルかはわかりませんけど。

「しづか」は静態保存なので眺めるだけですが、今回のお目当ては、モーガルの実車牽引列車に乗ることでした。小樽では「アイアンホース」というネーミングで、本物のモーガルが走っています。

重油燃焼で、客車とトロッコとカブースを牽引しています。

銘板も貫禄があり、1909年のポーター社製4514号とあります。

モーガルの製造最終時期に近い機関車です。車歴データを調べてみると、グアテマラに輸出され、その後、1959年にアメリカに戻って観光公園を転々として、最後の公園が閉鎖したことから、小樽が1993年に購入したようです。たぶん、アメリカに戻った段階でリストアされて、重油燃焼方式に改造されたのでしょうが、100年間ずっと走り続けているだけに、よく整備されています。

カブース(車掌車)も立派なものです。

走るのは200mくらいでしょうか。梅小路より短いでしょう。周囲の住宅地が丸見えになっているのが雰囲気を壊しています。

でも、梅小路より面白い趣向は、先にも転車台があって、機関車が方向転換します。

方向転換してから、横を通り過ぎていきます。

そして、逆からカブースを牽引する形で戻ります。

走行が終わると、小さな扇形庫に入る転車台に乗ります。

この扇形庫や転車台などは「旧手宮鉄道施設 機関車庫一号」として、重要文化財に指定されています。

モーガル以外にも、広い野外展示場にC5550、ED76509、キハ80系気動車など、北海道を走っていた懐かしい車両(塗装が剥げているのが多くて残念ですが)があり、なかなか楽しい時間を過ごすことができました。

北海道の鉄道はアメリカからの輸入という、本州とは違った味わいがあります。旧・手宮駅構内には鉄道起点(ゼロマイル・ポスト)がありました。手宮駅は1962年(昭和37年)に旅客営業が終わって、北海道鉄道記念館となったそうです。その後、1996年に小樽交通記念館として再開し、2007年に小樽交通記念館は小樽市博物館などと統合されて、小樽市総合博物館となりました。

これだけの歴史と興味深い施設があるものの、訪問客は多いとは言えないようです。札幌在住時代、北海道観光に来た人たちの話を聞くと、小樽は運河周辺の散策観光くらいしかイメージがなかったようでしたが、ここはとてもオススメです。「しづか」が置かれているエントランスの建物周辺はきれいなので、敷地を木々で囲むと、雰囲気は格段に良くなりそうでした。

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思い出の情景をいくつか。2005~8年頃です。

直線区間の終点駅。ここにしか駅はなかった。プラットホームは床材の余ったものです。

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バンダイのLITTLE JAMMER(リトルジャマー)をメルクリンの小型車両に載せて、演奏させながら走らせていました。客車にはLEDの電飾を入れました。みなさんに好評で、バンダイから取材に来ました。これは改良版で、線路から電源を得て定電圧電源を搭載して軽量化しています。今はすべてばらしてしまっています。

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HOの曲線部分を作っている作業を、当時の愛犬ショパンが眺めています。ショパンはこういう感じで、よく作業を眺めていました。

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ショパンが列車を眺めている姿はあまりありませんので、めずらしいショットです。

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ショパンが見ているLITTLE JAMMER列車は初期バージョンで、最後尾に電源車としてオートバイ用バッテリーを積んだ貨車を牽引しています。この重さでも何とか走行は可能でした。

 

テコはときどき、勝手に線路に登ってきますので、感電しないように気をつけていました。

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そして、自分も電車の気分になったのかな?

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札幌時代点描 2

1番ゲージ・Gゲージ(いずれも45mm軌間)の組み立て式レイアウト用木台ができてから、HOゲージとNゲージの線路基板を製作しました。2007年の夏からです。

HO・Nゲージの組み立て式レイアウトは、1・Gゲージの上に、レールを敷設した基板を置くだけという方式です。基板は9mm厚のシナ合板で、直線部分は細長く切ってもらい、曲線部分は、家具を製造している知人にレーザーカットをお願いしました。6枚で正円となります。HOとNで2組です。

レイアウト図面です。

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HOとNでレイアウトは同じです。この図面で、1から8は直線部分の基板を、AからFは曲線部分の基板をあらわしています。これらはバラバラになるので、組み立てる際の識別番号です。1・Gゲージでは線路を直接置くので、これらはありません。
基板と基板を固定するのは、HOもNも線路のカップリングだけですが、それで十分に安定していました。

基板へのHO線路敷設は、次の寸法で固定しました。

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複線で、外側をメルクリンの三線方式線路(Cトラック)としたのは、当時、メルクリンの車両を何両か持っていたからです。ただし、スイッチでDC二線方式にできるように加工してあります。見た目はあまりよくありませんが、とにかく、走行を楽しむことができればいいという観点です。

HOの曲線敷設作業です。ボール紙でカントを付けています。

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駅部分です。

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駅を置いて、使っているところです。窓の外は雪ですね。
このときのプラットホームはボール紙で作りました。

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札幌時代点描 1

札幌在住時代、21世紀になったころ、模型鉄道の遊び心が再燃しました。
小学生の頃から鉄道は好きで、模型は数両の真鍮やブリキ製のOやHOの車両をもてあそんでいました。その後は、たまに雑誌やN(軌間9mm、縮尺1/150程度)の車両を買っていたくらいで、気持ちはずっとくすぶっていました。
どういうきっかけだったかは定かではありませんが、Gゲージというサイズ(軌間45mmで、縮尺は1/18~1/23)の大型模型を知り、LGB製の中古品をアメリカのeBayで買ってみて、電源やコントローラを自作して、床で走らせて、その楽しさから離れられなくなりました。その後は、同じ軌間の1ゲージ(縮尺は1/32)にも手を出しました。
子供の頃に読んだ模型雑誌では、素材を加工して作っていくスクラッチ・ビルディングの記事がほとんどで、素材加工はとても無理だと思っていました。でも、自分の知識と技術で扱える範囲の楽しみ方があり、その範囲を少しずつ広げていく楽しみもあります。

2005年頃から、自宅リビングの窓際に棚をつないで、直線走行路と小さなヤードを作りました。さらに、ループ部分の組み立て式の木台を作り、周回運転ができるようになりました。木台は使わないときはしまっておけます。
そのころのレイアウト図は次のようなものです。

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赤の部分が固定式直線往復区間、茶色が組み立て式のループ部分です。この図面では左右の半円が同じになっていますが、実際には右側にヤードがあって、ずれがあります。そこで、曲線部のB区間で300mmの直線を1本入れていました。1・Gゲージの場合は道床なしで、板の上に線路をそのまま置いてつないでいくので、少しくらいの誤差は長い直線部で吸収できました。

DC電源や制御機器の多くを自作して揃えたのですが、DC制御にはいろいろと不満がありました。その一方で、DCCやサウンドの紹介記事を読むたびに、ギミック好きにとって、DCCはとても魅力的に思い、レイアウトを作りつつ、車両のDCC化を進めていきました。

現在保有している車両はほとんど札幌で改造工作したものです。DCC化の工作はいずれ別にまとめる予定ですので、ここでは当時の写真だけを点描します。

これは2007年5月の写真です。札幌の遅い春で、自宅の桜が満開です。
ヤード部分で、上のレイアウト図では右下にあたります。

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周回の組み立て部分をはずしてあり、周回用線路は棚に収めています。壁の棚に車両を置いていますが、地震の揺れに備えて、丸いプラスチックを付けました。こんなもので大丈夫かどうかはわかりません。

以下は周回を走る列車の写真です。撮った時期が違うので、一部、車両が異なっています。

窓際の固定式から組み立て式周回路に入ったところです。上のレイアウト図では、左下、曲線区間Aのあたりです。

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直線路に入ってきました。

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直線部の後半です。ヤードの裏側にあたる本棚を回っています。このあたりは本棚に折りたたみ式の棚受けを取り付け、板を置いているだけです。

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周回を戻ってきた列車です。このあたりは曲線と直線が連続していますので、かなり車両間がずれます。

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組み立て式レイアウトは、走らせる前と後に、設置と片付けという手間が大きいので、月に数回程度の運転でした。でも、長い直線区間を端っこから眺める光景はとても楽しいものでした。