小樽交通記念館のモーガル

2005年5月22日、LGBのモーガル機関車を整備していた頃、当時の小樽交通記念館(現在は小樽市総合博物館)で実物のモーガルが走っていることを知り、訪ねてきました。前回この施設を訪れたのは北海道鉄道記念館の時代で、20年くらい前です。

きれいな建物に変わった玄関には復元保存されているモーガル「しづか」が展示されています。

大阪の義経、東京の弁慶と同様に、輸入当時に復元しているそうですが、当時はカラー写真がなかったので、カラーリングなどの考証には相当の苦労があったのでしょうね。
なかなかの可愛さです。

ヘッドライトはオイル・ランプです。当時の夜は真っ暗だったでしょうから、こんなライトで前方が見えていたのでしょうか。それとも、前方を照らして見るというより、機関車が来ているのを確認するくらいの用途でしょうか。

圧力計が一つあるだけのシンプルな運転席です。

投炭口は小さいですね。LGBモーガルのように、大きな薪をくべるのは不可能でしょう。

銘板です。

こんなものを自宅の模型室に置いています。

「しづか」の銘板の実物大レプリカです。苗穂駅横のJR関連会社で売っていました。一時だけの特製品かと思って買ったら、今でも通販しているようです。まあ、日本にある2-6-0モーガルの銘板は多くが復元工事の際に再製作されたようですから、どれがオリジナルかはわかりませんけど。

「しづか」は静態保存なので眺めるだけですが、今回のお目当ては、モーガルの実車牽引列車に乗ることでした。小樽では「アイアンホース」というネーミングで、本物のモーガルが走っています。

重油燃焼で、客車とトロッコとカブースを牽引しています。

銘板も貫禄があり、1909年のポーター社製4514号とあります。

モーガルの製造最終時期に近い機関車です。車歴データを調べてみると、グアテマラに輸出され、その後、1959年にアメリカに戻って観光公園を転々として、最後の公園が閉鎖したことから、小樽が1993年に購入したようです。たぶん、アメリカに戻った段階でリストアされて、重油燃焼方式に改造されたのでしょうが、100年間ずっと走り続けているだけに、よく整備されています。

カブース(車掌車)も立派なものです。

走るのは200mくらいでしょうか。梅小路より短いでしょう。周囲の住宅地が丸見えになっているのが雰囲気を壊しています。

でも、梅小路より面白い趣向は、先にも転車台があって、機関車が方向転換します。

方向転換してから、横を通り過ぎていきます。

そして、逆からカブースを牽引する形で戻ります。

走行が終わると、小さな扇形庫に入る転車台に乗ります。

この扇形庫や転車台などは「旧手宮鉄道施設 機関車庫一号」として、重要文化財に指定されています。

モーガル以外にも、広い野外展示場にC5550、ED76509、キハ80系気動車など、北海道を走っていた懐かしい車両(塗装が剥げているのが多くて残念ですが)があり、なかなか楽しい時間を過ごすことができました。

北海道の鉄道はアメリカからの輸入という、本州とは違った味わいがあります。旧・手宮駅構内には鉄道起点(ゼロマイル・ポスト)がありました。手宮駅は1962年(昭和37年)に旅客営業が終わって、北海道鉄道記念館となったそうです。その後、1996年に小樽交通記念館として再開し、2007年に小樽交通記念館は小樽市博物館などと統合されて、小樽市総合博物館となりました。

これだけの歴史と興味深い施設があるものの、訪問客は多いとは言えないようです。札幌在住時代、北海道観光に来た人たちの話を聞くと、小樽は運河周辺の散策観光くらいしかイメージがなかったようでしたが、ここはとてもオススメです。「しづか」が置かれているエントランスの建物周辺はきれいなので、敷地を木々で囲むと、雰囲気は格段に良くなりそうでした。