メルクリン 5556 Krokodil

札幌時代(2007年)のDCC化の工作です。
メルクリン(Märklin)の1番ゲージ(1/32)で、スイスの貨物用電気機関車Be 6/8 II 13254(メルクリン型番5556)です。

スイスでは急勾配とカーブに適合させた「連接式」の機関車が100年以上前から開発されていました。この連接式は前後のボンネットの下に動力装置が入り、中央のキャビンが前後のボンネット下の台車と特殊な心皿でつながって可動式になっています。そのため、カーブに合わせて左右にくねくねと動くので、クロコダイル=ワニ(英語:Crocodile、独語:Krokodil、略称:Kroki)と呼ばれています。

この種の機関車を最初に知ったのがいつかは記憶にありませんが、南海の凸電(凸型電気機関車)を複雑に巨大化したような、とても楽しそうな機関車があるもんだと思っていました。電動モーターで動くロッドで蒸気機関車と同じ形の動輪を駆動しています。

Be 6/8 II 13254は1919-20年にCe 6/8 IIとして製造され、その後1940年代に改造されてパワーアップし、Beになったそうです。最初の文字がA~Dの場合は標準軌の最高速度(Aは80km/h以上、Bは70~80km/h、Cは60~65km/h、Dは45~55km/h)となっています。この車両はCからBへ格上げされたことになります。2文字目のeは電気機関車を表します。6/8という数字は古いスイス国鉄の表記方式で、6は動輪軸の数、8は前後の先輪の軸を加えた数となっています。現在の形式表記(UIC)では1-C+C-1となります。IIは初期型の改良機という意味です。

実機を見たことはなく、1992年にスイスへ鉄道旅行した際、ひょっとしてと少し期待しましたが、1980年代にすべて引退していて、クロコダイルを見かけることはありませんでした。それでも、この型は7輌が解体されずに保存されているようで、動態保存されている車両もあり、YouTubeに動画が出ています。この13254号機はルツェルンの交通博物館に静態保存されているそうです。

メルクリンが1番ゲージのスイス・クロコダイルを出したのは1933-4年だそうで、型番はCCS 66 13021(すぐに12921に変更)、ボディも鋳造製のように見えます。その頃からクロコダイルは人気だったようです。この時期のモデルは2017年のオークションで3万9千ユーロの値が付いたという情報がありました。

戦後に改訂版が何度か出た後に、1983年に5754として新版が製作されたようです。入手した5556は1990年頃の製品でしょうか。2007年1月、eBayドイツに出品されていて、他のビッドはなく、格安で購入できました。グリーンはCe 6/8 IIの初期色を踏襲しています。他にはブラウンもあります。

2001年にメルクリンは55561という型番でmfxサウンド(メルクリンのDCCサウンド版)を組み込んだ同じモデルを出していて、2,500ユーロくらいで、新品はとても手が出ません。このシリーズも生産終了となった現在は、eBayで格安とは言えませんが、まあまあ(半額くらい)の値段になっているようです。

今年2019年、クロコダイル人気は衰えないようで、メルクリンは1番ゲージのクロコダイル新製品55681(Ce 6/8 III)を発売しました。価格はまた上がって、3,500ユーロとなっています。写真を見ただけですが、とても精細な作り込みになっていて、博物館用モデルの感じで、走行を楽しむには勇気が要りそうです。

そういうその後のモデルはさておいて、5556を開封してからの作業です。ホコリもなく、ほとんど箱に入れたままだったようです。
両側の緩衝器までの長さは61cmあります。体重計で重さを量ってみました。

5.2kgでした。床と台車部分はダイカスト(鋳造)製ですが、ボンネットとキャビンの上物は樹脂製です。分解したときに計量したら、前後のモーター台車+ボンネットがそれぞれ2kgほど、中央のキャビン+床が1kgほどでした。

メルクリンに限りませんが、1番ゲージの車両はかなり精巧に作られていて、かつ重いので、持ちどころが悪いとパーツが簡単に壊れてしまいます。LGBも重いですが、これほど気を遣うことはありません。

重いし、動輪にトラクション・タイヤ(シリコンゴムの滑り止め)が付いているので、相当な牽引力がありそうですが、長編成を試みる機会はありません。

同封の説明書には、当時に始まっていたメルクリン・ディジタルの説明が入っていました。

入手した5556からはディジタル制御ができるようになっています。ただし、ヘッドライトの点灯だけですね。1番ゲージの55xxシリーズは蒸気機関車も含めて9種類あって、それぞれに少しディジタル制御可能な項目が違うようです。ヘッドライト以外にできることは、蒸気機関車のスモーク(煙発生装置)、警笛、ベルくらいです。いかにも鉄道模型ディジタル化草創期という時代が見えます。

恒例で、古い製品を購入したら、DC電源で簡単に動作をチェックし、すぐにDCC化のために全体を分解していきます。これが一番楽しい作業です。DCCボードはこのクロコダイルのサウンド・ライブラリーがあるESUのLokSound XL(V3)を入れます。

LGBやメルクリンの機関車にはパーツリストや分解図がありますので、分解は比較的容易です。同封されていなくても、ネット上に多く見つかります。

中央のキャビンを取り外しました。

キャビン内部には制御基板が入っています。不要なので、取り外します。

写真の左が元の基板、右がサウンド・デコーダーLokSound XLです。

LokSound XLをキャビン内部の見えない空間に入れておきました。

キャビン内の運転台にはドアを開けると指が届くところに、パンタグラフから架線集電をする切り替えスイッチがあります。これは有効のままにしておきましたが、使う予定はありません。

前後のボンネットとキャビンを外した下回りです。

動輪のギヤボックスです。掃除してグリスを交換しておきます。

スピーカーを取り付ける場所はキャビンの床しかありませんので、下回りを分解し、床だけにして、スピーカー用の穴を開ける準備です。

ダイカスト製で硬かったのですが、何とか穴を開けました。

スピーカーを取り付けて、デコーダーをつなぎました。

オリジナルの回路からLokSoundに置き換えています。

前照灯は台車に置かれた電球をボンネット裏の透明プラスチックの導光で使っています。

これを再利用する方法も考えたのですが、電灯のレンズが不透明になっているのが気になったので、LEDを直接嵌めて比較してみました。左がオリジナル、右の上部がLEDに替えたヘッドライトです。

電灯のレンズにはWAVEのアイズ(日本製)という安いプラスチック製品がぴったりなので、個別のLEDにしました。プラ粘土を使って、LEDを取り付けています。

電球らしくなりました。

点灯時は半世紀以上前の機関車としては明るすぎたかもしれませんね。気になったら調整します。なお、運転席にも灯りを入れてみました。

以上が札幌時代の作業でした。その後の大阪でも元気に走行しています。最近(2019年8月)の動画です。いずれも大きい音が出ます。

LokSoundのサウンドをいろいろ出してみました。うるさいです。

トンネルから出てきます。

駅に停車して、電源を落とすところまでです。