年末はSF映画

2017年12月29日

12月も下旬になり、今年の春に買っておいたSF映画のBD(ブルーレイ・ディスク)を一日に一本ずつ観ていました。「2001年宇宙の旅」と、SFとは言えないかもしれませんが、「スターウォーズ」7作品です。

1968年公開の「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」は大阪梅田OS劇場のシネラマで観ました。その時の「観覧券」を残しています。昭和43年(1968年)6月29日午後3時25分開映とあります。

裏面のコマーシャルも面白いですね。

その後、ほとんど映画館で放映されなかったので、ビデオテープとDVD2枚を買って、何度観たかわからないくらいです。今年になってBDを買いました。ディジタル処理されたBDは千円を切っていました。と書いていたら、NHK-BSで新春1月4日に放映されることを知りました。これはBD並の映像なのかな?

大きくなったテレビでBDを観ていると、きれいではあっても、やはり、OS劇場の巨大スクリーンの記憶は強烈で、自宅視聴は迫力に欠けるのですが、何度観ても飽きません。

特に思い出深いシーンが2つあります。

一つは、フロイド博士が月に向かう途中に立ち寄る宇宙ステーションの中にあるラウンジです。フロイドが歩いてくる左に「HILTON(ヒルトン)」のフロントがあり、歩き続けて右にパンしていくと、電話会社Bellの宇宙公衆映像電話(PICTUREPHONE)があります。そして、その向かいに「Howard Johnson’s(ハワード・ジョンソンズ)」の「EARTHLIGHT ROOM(日本語字幕では「地光の間」となっています)」と書かれたフロントが出てきます。

このシーンは、ビデオテープでは広い画面が狭くカットされていたので、ハワード・ジョンソンズが見えませんでした。DVDになって、両方が見えるようになりました。でも、ヒルトンの下に書かれている文字はDVDでは読めませんでした。BDでは「SPACE STATION 5」と読めます。これがDVDとBDとの違いだとわかる場面でした。ついでですが、この場面に出てくる赤い椅子は「Djinn chair」と呼ばれて、今でも販売されている定番商品(一人掛けが$1,800!)だそうですね。

ヒルトンは高級ホテル、ハワード・ジョンソンズは中級のホテルやモーテルのチェーンです。この2つのホテルが宇宙ステーションの中に入っているという設定は当時のアメリカ文化を象徴しているように思えました。

映画公開よりずっと後のことですが、1980年代にアメリカに滞在していた頃、ヒルトンに泊まったことはありませんが、ハワード・ジョンソンズのモーテルには時々泊まりました。周りの小さなモーテルよりきれいですが宿泊料金が少し高く、それでも敷居はそれほど高くありません。泊まったときに、宇宙ステーションの中にラウンジがあったことを思い出しました。

このあたりは、映画公開直後に出版された原作者アーサー・クラークの本には、宇宙ステーションに「レストラン、郵便局のほかに、新しく床屋、ドラッグストア、映画館、そしてみやげもの売店ができていた」と書かれていますが、さすがに、ヒルトンとハワード・ジョンソンズの名前はありません。製作スタッフが考えたのでしょうね。

もう一つは、MITのミンスキー(Marvin Lee Minsky)先生に教えていただいたシーンです。1982年から83年にかけて、ミンスキー先生の(自宅での)ゼミに出席していました。先生は昨2016年1月に亡くなられましたが、「2001年宇宙の旅」の科学アドバイザーの一人でした。その時のエピソードをうかがう機会がありました。

映画が完成し、試写会で観ていて、ボーマンの乗ったポッドがディスカバリー号に戻ったとき、HAL 9000は扉を開けない。そこでボーマンは非常ハッチに近づき、ポッドから伸ばしたアームをハッチの回転ノブに固定して、アームの先だけをクルクル回して、ハッチを開ける。とてもスリリングなシーンだけど、このポッドのアームの動きにはびっくりした。1960年代のロボットアームは、関節の動きはそれなりに可能だけど、その先が回転できる仕組みが理解できない。それで、キューブリックに聞いたら、あれはハッチの裏側から回転させている、それが映画だ、と言われて、大笑いになった、という話でした。

さて、まったく趣向の異なる「スターウォーズ」のBDです。左はエピソードⅠからⅥまでのパック、右はエピソードⅦです。エピソードⅧは先日公開したばかりなので、映画館で観るかどうか、全体の復習をしてからという気分です。

1978年日本公開の最初の作品(初期3部作の1作目)は阪急・三宮駅にあった阪急会館という映画館で観ました。震災の影響で、趣のあった三宮駅のビルは今は無くなっています。まだ、エピソードⅣとか「新たなる希望」という副題は付けられていませんでした。

こんなSF活劇が出てきたのは新鮮でした。「スタートレック」の戦争バージョンの印象です。宇宙での映像は「2001年宇宙の旅」にかなり影響を受けている感じでしたが、やはり特徴は音響ですね。真空の宇宙の話なのに、地球上が舞台のような大音量が刺激的で、あり得ないと思いながらも引き込まれてしまいました。特に超低音がすごい、と思ったら、下を走る阪急電車の振動でした。

当時はOS劇場のような一部の映画館を除いて、入れ替え制ではなかったので、面白かった映画は必ず2回観ることにしていました。しかも、たいていは最前列あたりの座席でした。これはシネラマの影響だったのでしょうね。

2作目と3作目は札幌で観ました。でも、映画館で観たのはここまででした。初期3部作で基本構想はわかったつもりになったので、しばらく忘れていました。今年になって、エピソードⅠからⅥまでのBD6枚パックの評判がいいので、Ⅶと合わせて買いました。

エピソードⅠからⅢまでは、ああなるほどね、という印象でした。興味を持ったのは、ディジタル処理された初期3部作(ⅣからⅥ)でした。一部はCGなどで置き換えられたそうで、かなりきれいになっていますが、やはり映像全体の荒さはあります。それに、R2-D2の(車輪で)歩く動きが、平らな場所をはみ出る直前でシーンがカットされる危うさなどはそのままです。このあたりは後の作品ではかなり自然な動きになっていますね。同様に、初期のダース・ベーダーは動きが軽快?ですね。

不思議に思うのは、画像のきめ細かさと画面のサイズとの関係です。自宅のテレビで観ると、新しい作品はとても鮮明です。しかし、その鮮明さが「映画」らしくないように思えるのです。テレビの生中継と同じような画質なので、鮮明な映画はテレビドラマのように見えます。かえって、初期3部作が映画らしい映像に思えます。

テレビは4K対応ですが、BDも含めて、現在は4Kの映像ソースはなく、4K映像を観たことがありません。メーカーによる液晶表示設定なのか、映画映像に対して作られた私の固定イメージか、それとも画面サイズが小さいからか、何なんでしょうね。

現在公開中のエピソードⅧを映画館で観るかどうか、ですが、エピソードⅦから「歴史は繰り返す」というシリーズになっているように思えたので、ま、どっちでもいいかな、という気持ちです。

これだけ連日観ていて、ちょっと気分を変えたくなって、最後にタルコフスキーの「惑星ソラリス」を観てしまいました。これはDVDです。久しぶりに観ました。

ソダーバーグの「ソラリス」もありますが、それだと気分が変わらないので、やはりタルコフスキーです。舞台装置のおおらかな作りと、ゆったりとした流れで、いろいろと考えさせられます。スタニスワフ・レムの本は面白かったものの、視覚イメージが湧かなかった記憶があります。この映画について、レムとタルコフスキーは相容れなかったようですが、映画の視覚イメージの効果は大きいですね。

心の実体化に関して、もう一つ、「禁断の惑星」を観ようかと思いましたが、年賀状を書かないといけないので、自制しました。「スタートレック」の映画版とテレビ版のDVD(いっぱい!)も観直しておきたいのですが、とても大変なので、いずれまた、です。