2018年5月7日
2012年にNAS(Network Attached Storage:ネットワーク用の外部記憶装置)を導入して、ネットワークプレーヤーで音楽を楽しむようになりました。その頃の状況に合わせて、iTunesで手持ちのCDを音質劣化の無いWAV(Wave)形式で取り込んでNASに収納しました。この経緯は「QNAP NAS更新?」に書きましたが、この世界をよく知らなかった頃の顛末記でした。今回はPCの更新を機会に、またもや試行錯誤でしたが、NASの音楽ファイルも変更しました。
ネットワークプレーヤーで聴く装置などは変わっていませんが、問題は、iTunesで整理していたWAVファイルが一部崩壊?してきたことです。NASに入れたCDは700枚くらい(1万曲を超えるくらい)で、ファイルそのものが壊れたわけではなくて、個々のCDアルバムとしてまとめられた曲がiTunesの中で一部どこかに移ってしまっています。
そういう迷子ファイルが数十曲になり、個別に調べて元に戻す作業が手間でした。少し調べてみたら、iTunesの操作ミスの結果だろうと思いますが、どうもWAV形式のファイルによる収納が根本的原因のようです。
WAV形式は、音楽CDに入っているPCM(Pulse Code Modulation:パルス符号変調)の楽曲データをそのままコンピュータに格納することで無劣化を実現しています。そもそも、CDには音楽データの他にはTOC(Table Of Contents)という領域に収録曲の時間データが順番に入っているだけで、曲名や演奏者などのデータは入っていません。曲名や演奏者の情報などはTOCを使ってインターネット上のデータベース(CDDB)を検索したり、カーオーディオのようにデータベースの一部をダウンロードしたりして表示しています。
音楽CDが出た頃は、CDプレイヤーで再生すると、トラック番号と時間しか出てきませんでした。CDに曲名などを入れたCD-TEXT対応という音楽CDがあって、対応するCDプレーヤーなどで曲名を出すことができます。CD-TEXTを使えばCDDBを検索する必要はないでしょうが、日本語処理(2バイト文字)がうまくいかないと聞きましたが、最近の動向は知りません。
これまでにどれほどの音楽CDが発売されたのかはわかりませんが、iTunesでCDをインポートするとき、版が違う別候補が出ることはあっても、間違ったCD情報が出た記憶はありません。iTunesはGracenote(SONYの子会社)という商用CDDBを使っています。GracenoteはカーオーディオのCDプレイヤーでもよく使われています。
iTunesはCDをインポートするときに、GracenoteからCDの情報を得ると同時に、iTunes StoreにあるCDなら、アルバムのジャケット写真(アートワーク)も入れてくれます。まあ、手持ちのCDではアルバムアートワークは半分も取得できませんでしたけど。iTunesはこれらのCD情報を別のファイルに蓄えていて、画面にはアルバムやアーティストの分類で曲を表示して、再生はリンクしたWAVファイルを使っています。
6年前に選んだインポート形式WAVの楽曲データと曲名などのCD情報データとが別物なので、いろいろな不都合(リンク切れなど)が生じるようです。この不都合を根本的に直すために、楽曲データとCD情報データを同じファイルに一体化することにしました。
楽曲データとCD情報データの一体化というのは、楽曲データの入れ物(コンテナ)にCD情報データも入れたファイル形式にすることですが、WAVではできません。音質劣化なしに一体化できる形式として、ALAC(Apple Lossless Audio Codec:アップル・ロスレス)やFLAC(Free Lossless Audio Codec:フリー・ロスレス)などがあって、そのような形式に変換しなければなりません。いずれも楽曲ファイルの中にタグという情報ユニットが付加されていて、アルバム名、曲名、演奏者名、アルバム画像(複数可)などが入るので、曲が迷子になるようなことはなくなるでしょう。
FLACやALACはWAV(PCM)を処理して、それなりに圧縮したデータに変換して収納し、再生時は逆変換してWAVと同じPCMデータとして出力するという方法です。可逆圧縮と呼ばれているように、逆変換すれば元のWAVと理論的には一致するとされています。まあ、その処理をする再生機器によって音質に何らかの違いが出るのかもしれませんが、よくわかりません。音楽CDはCDプレイヤーで再生される目的で作られているし、高級音響機器を使っているわけではないので、NAS上というのは目的外使用の気軽な楽しみ方と割り切っています。
現在も使っているネットワークプレーヤーSqueezebox TouchはALACとFLACに対応、DNP-720SEはFLACに対応、という状況なので、NASにアップするのはFLAC形式になります。ただし、データ圧縮をしないFLAC無圧縮(uncompressed)という形式を採用しました。これはWAVファイルをFLACというコンテナに入れただけのようですが、タグ情報を扱えるようになります。画像などのタグ情報が入るので、ファイルサイズはWAVよりも少し大きくなるようですが、CD700枚だとたかだか500GBくらいです。
そこで、iTunesで整理してきたWAV形式のファイルをFLAC形式に変換することにしました。最初の課題は、Apple社のiTunesは当然ながら自社が開発して公開したALACがメインで、現在もFLACには対応していないことでした。iPhoneなどでは最近FLACが使えるようになりましたが、おおもとのiTunesで使えないのです。近いうちにiTunesもFLAC対応になるだろうという噂は聞きますけど。
噂だけでは心もとないし、FLAC無圧縮が可能で、WAV-ALAC-FLACなどの相互一括変換ができるdbpowerampというソフトを購入($39)しました。このソフトで一括変換すれば簡単だ、と思ったのですが、実際はそれほど簡単ではありませんでした。ここで一括変換というのは、CD1枚の曲をすべてというのではなく、700枚ほどのCDの楽曲ファイルすべてを一括して変換することです。
確かに一括変換は問題なくできました。dbpowerampは Music Converter、CD Ripper、Batch Converterというアプリからなっており、一括変換はBatch Converterを使うと簡単です。WAV形式のファイルが大量に入っているフォルダーから2時間ほどかけて別のフォルダーの中にFLAC(uncompressed)ファイルが作られました。
一括変換できたのはいいのですが、残念ながら(当然ながら)、肝心のタグ情報が何も入っていません。もちろん、iTunesでインポートしたときに、演奏者名のフォルダーの中にアルバム名のフォルダーがあり、その中に曲名の曲ファイルができていますので、どういうアルバムの曲であるかはわかります。一括変換後のフォルダーの中は、楽曲ファイルの拡張子が.wavから.flacに変わっただけのように見えます。
仕方がないので、無料のCDDBを使ってタグ情報を入れるMp3tagという無料ソフトを使ってみました。次の図の左側はWAVからFLACに変換しただけの楽曲のプロパティのタグ情報をエクスプローラーで表示したもので、タグ情報は何もありません。右側はMp3tagでfreedbという無料のCDDBからタグ情報を得て、アルバムアートワークも挿入した結果です。

この方法でアルバムを1枚ずつ処理していけば、すべての曲に画像入りのタグを挿入していくことができます。しかし、700枚分を処理するのはけっこうな労力が必要です。まあ、あらためてCDを1枚ずつリッピング(取り込み)するのを考えるとずっとマシですけど。
ここで思い出したのは、iTunesが商用CDDBのGracenoteを使っていることでした。dbpoweramp(Batch Converter)で一括変換するにしても、WAVを直接にFLACへと変換するよりも、iTunesでWAVをALACに変換してから、それをdbpowerampでFLACに変換したらどうだろうと考えました。iTunesで変換したALACファイルにはGracenoteの情報がタグに挿入されているはずだという見込みです。WAVからFLACへの変換とWAVからALACを経たFLACへの変換が全く同じFLACファイルになるのかどうかは知りませんが、「原理的には」同じ結果になるはずです。
試しに、上と同じアルバム曲をiTunesでALACに変換し、それをdbpowerampでFLACに変換しました。次の図の左はiTunesでALACに変換したファイルのタグ情報です。右はそれをdbpowerampでFLACに変換してからMp3tagでアルバムアートワークを挿入した結果です。

freedbよりもGracenoteのほうがタグ情報は多いようです。でも、アーティスト名は、freedbでは「Abdullah Ibrahim (Dollar Brand)」というように、括弧内に彼が以前使っていた名前も入っています。CDDBでそれぞれに特徴があるようです。
なお、このCDを直接にdbpowerampでリップしてFLACに変換した場合と、iTunesによるALACをdbpowerampでFLACに変換した場合では、楽曲ファイルサイズに数十バイトくらいの違いがありました。付加されたタグ情報の違いだけなのかどうかわかりませんが、音質の違いは私には感じられませんでした。ということで、まあこれでいいということにしました。
試しに変換したアルバムがアルファベット順で最初のアーティストのものだったわけで、他のアルバムのCD情報がどう違うかはわかりません。どっちを選ぼうかと少々悩みましたが、Mp3tagでfreedbを調べるよりも、iTunesでALACに変換するほうが少しだけ手間省きだったので、まずはALACに変換することにしました。
iTunesでWAVをALACに変換しましたが、全アルバムを一括変換する方法を見つけることはできませんでした。仕方がないので、iTunesのCDインポート方式をALACに設定してから、1枚ずつアルバムを選んで変換しました。変換されたALACファイルはWAVとは別のフォルダーに階層的に入るので、処理は面倒ではありません。この単純作業は1週間ほどかかりました。
階層構造になったALACフォルダーをあらためてdbpoweramp(Batch Converter)でFLACに一括変換しました。3時間ほどかかりましたが、全自動なので気楽なものです。ちょっとだけがっかりしたのは、iTunesの中でアルバムアートワークが入っていても、ALACに変換するとアートワークは画像タグに挿入されなかったことです。これはiTunesのユーザー向き限定のサービスなんでしょうね。
dbpowerampの姉妹品にPerfectTUNESという、画像タグも挿入してくれるというソフトがありますが、dbpowerampを買って、さらにPerfectTUNESを買うのは、CDコレクションが何千枚もあるのであればともかく、ちょっと買う気にはなりませんでした。コレクションが200枚くらいまでであれば、dbpowerampを買う必要もなさそうでしたが、FLAC uncompressedを作ることができません。ともかく、時間はあるので、Mp3tagで1枚ずつアルバムアートワークを挿入していきました。
Mp3tagでアルバムアートワークを探すのはDiscogsという音楽や映像のデータベースです。ここに登録されているアートワークが候補に出るのですが、Mp3tagから検索しても候補は画像が並ぶわけではなく、リストとして出るだけなので、けっこうな手間だし、出てきた写真がビニールカバーで覆われた場合もあって、選ぶまで時間がかかります。
結局は、タグに表示されるアルバム名と演奏者名を使って、別のウィンドウのブラウザーでネット検索した画像をタグに挿入する方法に落ち着きました。Amazon(日本・海外)やDiscogs、HMVなどでサイズや鮮明度を比べて選びます。中にはPerfectTUNESが提供している画像もありました。好ましい候補が見つからない場合は仕方がないので、実際のアルバム表紙をスキャンして取り込みました。後で試してみたら、エクスプローラーによるタグ画像検索のほうが楽だったような気もしますが、1曲ずつのタグ処理しかできませんでした。1曲ずつアルバム画像などのタグ情報を挿入・変更するには便利なようです。
この作業は1ヶ月近くかかりました。かなり疲れましたが、それなりのアルバムアートワークが入ったFLACのコレクションが完成しました。
今後もiTunesを使うかどうかはわかりませんが、dbpowerampで逆にFLACからALACに一括変換してみたら、アルバムアートワークも入ったALACファイルが完成しました。この変換も3時間ほどかかり、今回の変換処理が新PCのCPU(i7 8700K)パワーを最大限に発揮する機会となりました。でも、一番時間がかかったのは、FLACファイルをQNAP NAS-112にアップロードすることで、延べ3日くらいかかりました。
ともかく、その結果、Squeezebox Touchにアルバム情報が出てきました。

小さな画面ですし、食器棚の上に置いているので、見るのは電源が入っているかの確認くらいです。それに相変わらず日本語フォントを入れていないので、日本語の場合は表示が▯▯▯▯▯▯になります。
こちらはiPeng 9でコントロールしている手元のiPadの画面です。iPengでは日本語もちゃんと表示されます。

とても見やすく、操作が楽しくなりました。残念ながら、iPeng 9ではアートワーク画像は1枚しか出ないようです。
100KB以下の小さなアートワーク画像はiPad miniでさえもかなり粗くなりますね。もっと大きな画像を入れるほうが良さそうなので、気になった画像はぼちぼちと差し替えていくことにします。
iTunesでインポートした古いCDでは時々リッピング不良が起こっていたので、本来なら、リッピング能力に定評のあるdbpoweramp(CD Ripper)であらためてすべてのCDをFLACで取り込むほうがいいのでしょうが、一通りの作業が終わった今はその気になりません。聴いていて音がおかしい場合は再取り込みをするつもりです。2つのオーディオ・システムで数枚のアルバムを聴いてみましたが、これまでのWAVと同じ印象なので、当面はOKのようです。
リッピングにはdbpoweramp(CD Ripper)がいいとは思いますが、弱点もありました。dbpoweramp(CD Ripper)が参照するCDDBはiTunesの使っているGracenoteよりも情報量がかなり少ないようです。そのため、日本で制作されたコンピレーション・アルバムなど、CD情報が見つからない場合があり、手持ちのアルバムで数十枚が該当しました。そういうアルバムはiTunesでALACに変換し、それをdbpowerampでFLACに変換しました。この点、iTunesでCD情報が見つからなかったアルバムは手持ちにはありませんでした。
(追記:その後に入手した「1972 春一番」という10枚組はiTunesでも半分以上はCD情報がありませんでした。これはリッピングしてから手入力になりました)
最後の作業はクルマのオーディオに入れるSDカード用のMP3形式のファイルの作成でした。これもdbpoweramp(Batch Converter)で簡単に作ることができます。
いくつかのレートで作って車内で聴いてみたら、190kbpsという粗いもので十分でした。190kbpsのMP3だと32GBのカードに4千曲ほど入ります。

CDを入れたときと同じようなタグ情報の画面が出るようになって、渋滞時でも気持ちが紛れそうです。ただ、このカーオーディオでは画像(アルバムアートワーク)が大きい(1,000×1,000くらい以上)と表示できないようで、別途に小さな画像を選ぶしかありませんでした。それでも、ランダム選曲モードにしておいて、かつて自分が選んだ数千曲から選ばれた懐かしい好みの音楽を聴く面白さは癖になります。
すべての作業を振り返ると、思いつきで始めてテキトーに工夫するという、模型作りと一緒のレベルです。終わってから、「図解コンパクトディスク読本(中島平太郎・小川博司 共著、改訂3版、オーム社、1996)を図書館で見つけて読みました。CDの基本構造がよくわかって面白い本です。