「日本茜 伝承と未来」展

2020年3月6日

服飾デザイナーの友人が協力した展示会「日本茜 伝承と未来」が知恩院の和順会館で開催されているので、久々(1年ぶり)に京都に出かけました。

案内パンフレットです。

現在の状況を反映して、四条通はとても歩きやすい人通りです。

八坂神社も閑散と言うほどではなく、記憶にあるかつての平日という雰囲気です。去年の人混みとはかなり違います。

境内でも多く見かける着物姿の若い人たちはみなさん中国語を話していました。

本殿を眺めて気がついたのですが、鈴緒(すずお:鈴を鳴らす綱)が使えないようになっていました。賽銭箱は使えるようです。

知恩院へはいつも八坂神社を通り抜けて南門から入ります。和順会館は南門を入ってすぐ左です。

知り合いにちょっと挨拶をしてから、展示を眺めていきました。

今回の展示会は京都府南丹市美山町で行われている「日本茜伝承プロジェクト」の一環で、美山町で見つけた日本茜を3年かけて増やし、やっと染料として使える量を生産できたので、それを使って開発した商品の発表会だそうです。

日本茜(美山茜)の実物展示です。

日本茜で染めた糸と組紐などの小物製品です。絹を使ったものが多かったように思います。

すべてが薄いピンク色に染まっています。

正倉院に残っている緋色は日本に古来からある日本茜を使っていますが、染めが容易なセイヨウアカネやインドアカネが入ってからは、ほとんど使われなくなったそうです。

うまくコントロールすると、次のようにきれいなカラー・バリエーションができるようです。

さて、友人の作品です。木糸(もくいと)を使った服地を茜で染めて、デザインしています。右から2つめは不要となった端布を集めて作っています。面白いアイディアです。

木糸は杉や檜の間伐材などの木質部分をチップ化し、繊維を抽出して和紙にして、それを細く糸状に切って、撚り合わせてから織って布地になります。

手触りもざっくりした感じで、雰囲気のいい仕上がりでした。

こちらは友人の師匠であり、梅染友禅で有名な山本晃氏の作品(絹)です。

1時間ほど眺めていて、午後2時から「木糸」についてのトークが始まりました。

友人と木糸製作会社(大阪府阪南市の「和紙の布」)社長である阿部氏との対談の予定でした。でも、阿部氏が風邪気味で、時節柄遠慮して欠席なさったので、友人が一人でがんばりました。服飾デザイナーとして、糸と染料の生産とも関わってきた興味深く楽しいエピソードが満載でした。最後に山本氏も解説に加わりました。

新型コロナウィルス感染でざわついている外界から離れて、手作り世界の面白さを楽しませてもらいました。

 

京都・梅染展

知恩院の和順会館で冬の梅染(うめぞめ)展が12月20日まで開かれていました。10年ほど前から始まって、これまで時々寄っています。梅を使った友禅染め作家の山本 晃さんの作品展で、山本さんに弟子入りした?友人も出品していて、会場で説明してもらえるので、19日に同窓の友人と3人で鑑賞してきました。

久しぶりの阪急京都線から眺めた淀川です。いつもと逆向きの淀川風景です。

河原町から四条通を歩き、八坂神社を通り抜けましたが、ずっと人波が続き、ほとんどが外国人観光客のようでした。知恩院あたりは静かでした。知恩院には宮崎友禅を記念した友禅苑があります。

山本さんはブログをなさっていますし、梅染展の紹介は和順会館のブログにありますので、紹介は省略しますが、梅、特に紅梅を使って染めた、ほのかで上品な色合いが魅力的です。山本さんに話をうかがうと、梅の枝から出る樹液で梅色を出すだけではなく、藍や鉄による染めのコーティングにも梅を使っているそうです。

自然素材なので、樹液を取る梅の木によって、また時期によって色は変わり、同じ出来上がりを再生産するのはむずかしく、一点ものにならざるを得ないそうです。それでも、データを収集整理して、誰でも同じような作品を制作できる環境を作っていきたいとおっしゃっていました。

その背景には、静岡県伊東市にある児童福祉・障害福祉事業所が昨年から始めた「梅染工房ひかり」による「梅染プロジェクト」があります。山本さんの指導で梅染作品を制作販売していて、「梅染工房ひかり」の作品も展示されていました。

さて、友人の作品の素材は和紙布か絹で、梅を含めた草木染めです。素材製作はすべて仲間との協同作業のようです。なかなかエレガントな雰囲気です。

次は藍染した糸の手編みレースを襟に使っています。

次の写真で、上に掛けてある藍染の帽子が気に入りましたが、彼が作ったものではありません。

シャツやブラウスは和紙布の草木染めのようです。

これは梅染めと合わせていたものだったかな?

ゆっくり眺めて、山本さんにじっくり話をうかがった後は、4人で鴨川近くまでぶらっと歩いて、観光客はあまり知らない、混み合った居酒屋に入って乾杯となりました。

平等院鳳凰堂

大阪に戻った2012年に宇治の平等院鳳凰堂(阿弥陀堂)の大規模修復が始まり、一昨年(2014年)の今頃、修復が終わったと知りました。昼過ぎに、季節感からでしょうか、思い出して、頼まれ仕事が一息つけたこともあって、平等院を訪ねることにしました。

国道1号線の流れで走って、1時間ちょっとのドライブでした。駐車場は至る所にあり、平日だからでしょうか、「空」の表示ばかりで、どこも1回700円という均一相場です。修復直後とは違って、落ち着いたのでしょう。どこが便利かわからないので、広い駐車場を選んだら、場所が平等院の裏側だったので、南門から入りました。拝観料は600円でした。

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鳳凰堂の後ろ側が見えてきました。なぜか、なんか小さいな、というのが第一印象でした。小学生の頃に遠足で来て以来で、その後は10円玉で見ていただけですから、サイズ感がありませんでした。

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阿字池を回って、前の方にやってきました。午後は薄雲がかかり、しかも午後3時前なので逆光になりました。

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正面です。見慣れたような、見慣れていないような姿です。創建当時と同じ「丹土」で仕上げたそうで、渋い丹色です。

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鳳凰堂の内部拝観は別料金(300円)で、30分単位の時間指定制になっています。並んでいるのは15:00の人たちです。

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拝観券は15:30となりました。まあ、すいているのでしょうね。

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鳳凰堂の内部は写真撮影禁止でしたが、小さなデジカメで撮影できるようなものでもなく、眺めるだけで十分でした。内部は阿弥陀如来坐像を含めて、現状維持修理ということで、千年近く経った状態のままでした。若い女性が二人、板の状態を調べていました。修理作業は続いているようです。
鳳凰堂から阿字池を撮影しました。昔は正面あたりに宇治川が眺められたのでしょうか。

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屋根上には「鳳凰」も「宝珠」も金色に輝いています。
中堂の上に置かれた鳳凰の下の鬼瓦に「平成廿五年 修補」と刻まれています。

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左右の翼廊楼閣の上に置かれた宝珠です。

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あらためて、阿字池の向こう正面から阿弥陀如来坐像が見えるところをアップで写してみました。ネットで見る修復前の写真と比べてみると、正面扉の内側が江戸期に取り替えられたまま、というのがよくわかります。扉が閉まると、外側全体が新しい丹土の色で覆われていて、また別の統一的な雰囲気を感じるのでしょうね。

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南門横にあるミュージアム鳳翔館に寄りましたが、ここも撮影禁止です。日本の美術館は撮影禁止が多いですね。初代の鳳凰など、興味深い展示があったので残念でした。初代の鳳凰は、頭、胴と翼、尾、脚が鋳金パーツとなった組み立てで、風切羽や尾羽の板金部分が丸いリベットで固定されていました。現代と変わらない技法のようです。現在の鳳凰も同じ造りで複製しているのでしょう。

表門から出たのは4時を過ぎていました。濃茶アイスクリームを食べながら、宇治川横の遊歩道を歩きました。源氏物語(誰かの現代語訳)を読んだ記憶はありますが、宇治十帖の情景を思い出せるほどの記憶力はありません。でも、嵐山と似た風情で、中世貴族が別荘地として選ぶ雰囲気です。
遊歩道の途中に鳳凰堂の見えるスポットがありました。「桃李もの言わざれども、下自ずから蹊を成す」の通り、そのあたりの地面は草が消えて土が見えています。斜面ですから滑り落ちそうでした。そこからの写真です。宇治川散歩だけでも、鳳凰堂が見えると気分はいいものです。

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このあたりの宇治川は二分されていて、半分は堰で淀みを造り、船が浮かんでいます。

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ここでは、日本国内初の人工孵化となったウミウの「ウッティ」が仕事をしている鵜飼いが有名ですが、季節が違うことでもあり、閑散としていました。遊覧船はやっていたのかもしれません。

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お土産です。表門の参道で、茶だんごで有名な「稲房安兼(いなふさやすかね)」で買いました。

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なかなか上品な味わいでした。
桜もちと草もちを載せている皿は錫の鍛金で、先週に教室の時間が空いたので作ったばかりです。
錫の鍛金作業は最初にやって以来ですが、一枚あたり30分ほどで簡単にできるし、実用的なので、工夫しながら、このシリーズを作っていこうかと思ってしまいました。

伏見稲荷で

友人と伏見稲荷大社を訪ねました。

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日本全国の稲荷社の総本社で、外国からの観光客に大人気、初詣参拝者数は近畿でトップになるだけあって、平日でもけっこうな人出でした。子供の頃に来て以来、ずいぶん久しぶりです。
楼門の狐は格好良く、宝鍵と宝珠をくわえています。

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楼門を入る前から、神社とは思えぬ音楽が聞こえていました。
外拝殿でバグパイプの演奏をしています。
(下の2つの映像は音が出ます)

どういう趣旨かは知りませんが、スコットランドのバグパイプの奉納です。
本殿側からも写してみました。

さて、有名な千本鳥居を登って行って、途中の熊鷹社・新池で休憩し、暑くて疲れたので、もう登るのはやめることにしました。

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来た道を下りかけて思い出したことがあります。札幌の友人が2年ほど前にここに来て、鳥居を奉納しようとしているという電話をもらったことがありました。そのときは、百万円の鳥居ならすぐに可能だそうだけど、一番低額なのは1年以上の待ちになる。それで、待つことにした、という話でした。

「鳥居奉納のご案内」がありました。

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鳥居は何年持つのかは知りませんが、朽ちると場所が空き、次の奉納鳥居を建てると聞きました。所々、空いている場所がありましたので、彼が無事に奉納できたかどうかが気になり、千本鳥居の途中で電話して聞いたら、すでに建っていて、場所は電話をかけた場所のすぐ近くでした。これだけ多くの鳥居があり、しかも二股に分かれているので、探し出せるかどうかは疑問でしたが、なかなかの偶然か、伏見稲荷に参拝した効験か、でした。

ともかく、奉納者の名前・年月日が鳥居の裏に書かれていることから、帰り道で聞いたのが正解でした。往き道で聞いていたら、何度も振り返る必要がありました。

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その後は伏見の古い町をぶらぶらして、いい居酒屋を見つけて、楽しく過ごせました。

鴨川のヌートリア

京都・五条に用事があって、時間調整に京阪祇園四条駅(いつの間にか、祇園が付いたのですね)から鴨川遊歩道をぶらぶら歩いていました。河原で何か動いているものが目に入ったので、よく見ると、巨大なネズミ、「ヌートリア」という名前が浮かんできました。実物を見るのは初めてです。

写真を撮っていたら、散歩していた人が近寄ってきて、ここはよく歩いているけど私も初めて見た、とおっしゃっていました。

しっぽも含めた全身写真です。

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あとで調べてみると、鴨川にはヌートリアがかなり繁殖しているようですね。知る人ぞ知る、です。日本・世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれているくらいで、日本ではアライグマと並ぶ存在のようですが、ネット上では給餌している人や、可愛いと喜んでいる人の動画や写真が多くありました。

確かに、同じ仲間で、もっと大きくて鼻先が平坦になると、動物園の人気者カピバラですから、見ている限りは可愛いと言えそうです。侵略的外来種は既存の生態系を壊すほどの繁殖力を持つ外来生物ということですが、可愛い・珍しいと見られて、人への直接的危害が及ばないと、なかなか解決のむずかしい課題ですね。オオサンショウウオも鴨川まで下りてくるようですが、中国産との交配種が多いそうです。

ヌートリアをいつもの淀川河川敷で見かけたことはありませんが、「河川水辺の国勢調査」によれば、近畿全体の水系で、もっと下流の淀川でも見つかっているようです。淀川には、オオクチバスやブルーギルの釣りを楽しんでいる人もいるようですし、アカミミガメも多くて、こちらは河川敷でも時々見かけます。在来種の防衛と外来種の駆除は簡単ではなさそうです。