8月1日、先週の第2部に続いて、夏休み文楽特別公演の第3部サマーレイトショーの「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」と「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」を観てきました。暑さは先週と同じくらいで、地下鉄は強冷房でしたが、文楽劇場は冷房を少し弱めていたようです。
玄関ロビーに掛けられていた芝居絵です。
場内に入ったところでトップスター達が集合して、西日本豪雨災害への募金をしていました。ちょっとだけですが寄付して、カメラを向けたら、どうぞどうぞと言ってもらいました。和生さんの遣う人形と握手をしてもらった人もいました。
「新版歌祭文」は去年の新春公演で観た「染模様妹背門松」や、観ていませんが、紀海音の「お染久松袂の白しぼり」の後に近松半二が1780年に作ったそうで、お染久松の浄瑠璃としては集大成と言える作品だそうですね。
夏休み文楽特別公演は3部すべて2時間ほどなので、新版歌祭文は野崎村の段だけです。久松(人形:吉田文昇)の育ての親・久作(桐竹勘壽)は久松と娘・おみつ(豊松清十郎)を夫婦にしようとしていて、おみつは喜んでいますが、すでに久松はお染と心中する覚悟の仲になっています。お染が久松を訪ねてきて、それを知ったおみつは尼になってしまいます。
この段の終わり頃に、お染の母親・お勝(吉田蓑助)が野崎村に現れて、二人を連れ戻します。蓑助はちょっと出るだけの役でしたが、舞台に緊張感が出ました。お染は舟で、久松は駕籠で帰る段切り(段の最後)の場面は、駕籠舁(かごかき)や船頭の面白い仕草(チャリ場)があり、有名な曲が流れます。
遠い昔、大阪で落語を楽しんでいた頃から聞き慣れた桂春団治(三代目)の出囃子です。それが野崎というのは知っていましたが、オリジナルの文楽の三味線で聴くのは初めてでした。
竹本三輪太夫の語りで、三味線の竹澤團七に段切りだけ鶴澤清公が加わって、聞き慣れたメロディーが弾かれます。ツレ(連れ)弾きと言うそうで、メインの三味線がシンと呼ばれています。シンとツレという呼び名は能のシテ(仕手)とツレから来ているのでしょうか。
聴き慣れていたメロディーですが、実際はとても複雑な拍子と音階変化になっていて、シンとツレの微妙なズレが効果的で、落語の出囃子とは印象がまったく違いますね。とても楽しくて、人形の面白い動きはほとんど観ることができず、三味線ばかりに集中してしまいました。
次の演目・日本振袖始は近松門左衛門による五段構成ですが、大蛇退治(おろちたいじ)の段のみです。いわゆる中世神話の世界で、振袖が素戔嗚尊(すさのおのみこと)の時代に始まった(稲田姫が剣を袖に隠すため)というのも、なかなかの奇想天外さですが、桐竹勘十郎の岩長姫(八岐大蛇の化身)の人形遣いを楽しむことができましたし、素盞嗚尊を遣った吉田玉助もなかなか迫力がありました。
先週も今回も7列目で、人形をよく観るには少し遠く、でも太夫と三味線の距離はちょうどの感じでした。もっとお客さんが入ってもよさそうな演目でしたが、後方は空席が目立ちました。今年は暑すぎるのでしょうね。

