1982 The Game

1982年11月20日、好きなフットボールの話です。

ハーバード大学とイエール大学とのアメリカン・フットボールのゲームは、”The Game”と呼ばれています。フットボールの最初のゲームが1875年に両校で行われたからだそうです。

ゲームの2日前ころから、ハーバードのスタジアム周辺には、高級リムジーンが何台も停まっていて、初老の人たちがテントの下でテーブルを囲んで、ワインを飲みながら談笑しています。同窓生の集まりです。このゲームを観戦するために、世界中からやってきているそうです。

この年くらいまで、フットボールのアイビー・リーグは単独リーグで、このカードがいつも最終戦に設定されていました。今回が99回目の対戦だそうです。入場券も、普段のリーグ戦はIDを見せると2ドルなのに、全席指定で15ドルにはねあがります。当時、プロ・フットボールのニューインクランド・ペイトリオッツのゲームや、野球のボストン・レッドソックスのゲームでも同じくらいの料金でした。それでも観客は満杯です。

ゲームはハーバードが有利な展開で進みました。白がビジターのイエール、赤(クリムソン)がハーバードで、イエールの攻撃です。

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ハーフタイム・ショーの様子です。両チームのマーチング・バンドがそれぞれ、HとYを作っています。

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試合結果は、ハーバードが前年の雪辱を果して、アイビー・リーグ同率優勝となりました。終了直前のカウントダウンから観客が興奮してグラウンドに降りて、ゴールポストを引き倒す程でした。スコアボードは45:7でハーバードの勝利を示しています。

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しかし、この試合のハイライトは、第2クオーターでのハプニングでした。
ボールデッドとなったとき、突如、目の前のハーバード側の芝生が盛り上がり、土の中からシューという音をたてながら、黒い風船が大きくふくらみだしたのです。その風船にはMITと書かれていました。

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しばらくして、破裂しました。これを見て5万人の観客は大喜びです。もちろん、試合は中断で、警察もやってきました。

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MITの学生がリモート・コントロールでイタズラを仕掛けたのです。警察がチェックした後、グラウンドは整備されて、試合は続行しました。

MITも同じケンブリッジ市内にある、世界的に有名な大学ですが、残念ながらアイビー・リーグに入っていません。ハーバードとイエールという二大アイビー・スクールに対するアピールというところでしょう。

翌週、このイタズラの感想をハーバード、MIT双方の学生に聞いてみると、どちらもニヤリと笑い、同じようにアイディアを賞めていました。数日後のMITの学内新聞には首謀者の学生とのインタビューが載りましたし、その興奮は半年後まで続き、MITの卒業式当日、集まった同窓生に説明するため、MITの芝生上で再現して見せたほどでした。

テロの脅威が現実的な今のアメリカでは考えられないイタズラですが、いろいろな意味でのMITらしさが際だったハプニングでした。
ともかく、そこに居合わせて、目の前で一部始終を見ることができ、写真も撮ることができたのはとてもラッキーでした。

このイタズラは当日夜のTVニュース全国版でも報道されていました。この原稿を書いてから、試しにネット検索をしてみると、Boston Magazineに動画付きの記事がありました。